参列者を泣かせた「弔辞の名人」

③演説がうまい(特に弔辞は感動的である)

 演説のうまさもいろいろある。ユーモアあふれるものやたくさんの情報を織り交ぜるものもある。石破さんのスタイルは、泣かせる、奮い立たせる、スタイルのものである。

 地方が選挙区である政治家にとって、お葬式に呼ばれた時に弔辞を依頼された時は重要である。お葬式は中座できない。お葬式で中座したら悲しみに暮れる参列者を敵に回すようなものだ。

 石破さんの弔辞は参列者一同を泣かせるものだった。あの弔辞を聞いたものは全員強い支援者になるだろうなといつも感心した。

 応援演説もうまい。

 演説会に来るのはほとんどが支援者なので、応援演説のポイントはいかに支援者を燃えさせるか、そして彼らに投票先未定者や無関心層を掘り起こしてもらうか、である。そこもうまかった。

批判する側と実践する側はまったく違う

④非常に柔軟&他人の意見を聞きすぎてしまう

 選挙区での宴席でも党の部会でも辛抱強く他人の意見を最後まで丹念に聞いていた。

 そして何とかその人々の言い分を聞いてあげようというお人よしな点があるのだ。

 他人の話を辛抱強く聞くことは一般には美徳でもあるが、自民党総裁となると、ここが一番難しい点だ。

 与党の自民党総裁とは「矛盾を矛盾ではないと説明するのが仕事」である。様々な利害の調整を長年にわたって調整してきたツワモノばかりだ。

 悪人がいるわけでないが、その党内融和・利害調整は至難の業だ。批判する側から実践する側に移るとなると手強い相手ばかりだ。

 党内基盤を強化するためには、実力者のいうことは聞かないといけなくなってしまう。全員の意見を聞けるわけもないので、味方ができれば敵もできる。百戦錬磨の方々の腹を読んでそのバランスをとるのは本当に難しい。