為替ヘッジありとなしで運用成果はどう違う?
実際、為替ヘッジコストの「あり」と「なし」で運用成果がどう違うのか、先進国株式・外国株式・先進国債券に投資する投資信託で比較してみます。
<為替ヘッジの「あり」「なし」による違い>
注目はリターンとリスクです。確かに、為替ヘッジありのほうがリスクは若干低くなっています。しかし、リターンは為替ヘッジなしの商品のほうがずっと高くなっていますね。加えて、シャープレシオ(リスクに対するリターンの度合い)も、為替ヘッジなしのほうが大きい(効率よくリターンを出せている)ことがわかります。
コストの面でも為替ヘッジなしのほうが優秀です。いずれも、コストの安い投資信託ではあるのですが、為替ヘッジなしの商品のほうが保有中にかかる信託報酬が安くなっています。「iFree外国株式インデックス」は為替ヘッジありでもなしでも信託報酬が同じなのですが、投資信託の運営費用などを加えた「実質コスト」をみると為替ヘッジなしの方が安くなっています。
さらに、為替ヘッジありの商品は、円安によって為替差益が得られるというときにも、その恩恵を受けにくくなってしまいます。日本経済新聞によれば、先進国株式・先進国債券に投資する投資信託の1年リターン(2024年4月末時点)は、「為替ヘッジなし」が「為替ヘッジあり」を大きく上回ったと報道しています*1。
為替ヘッジありの商品に投資していた場合は、資産自体が値上がりしていても、円安の恩恵を受けられなかったということがわかります。
ところで、2024年9月には米国が0.5%の利下げを発表しました。米国の利下げは円高の要因(日米の金利差が縮小するため)で、2024年には161円まで円安になった米ドル/円の為替レートも一時139円台まで円高に進みました。
今後も円高が進む可能性も否定はできません。ですから、円高に備えて「為替ヘッジあり」の投資信託を購入したいという方もいるでしょう。確かに、為替変動による損失を抑えられるでしょうが、その分、為替ヘッジコストによるパフォーマンス悪化が大きいことも忘れてはいけません。
値動きと上手く付き合いながらお金を増やすための方法として分散投資があります。
分散投資には、「資産の分散」「地域の分散」「銘柄の分散」「業種の分散」「時間の分散」がありますが、「通貨の分散」も大事です。
為替ヘッジがなければ、為替変動の影響を受けやすくなりますが、余計なコストがかからず、為替レートが円安に向かったときには為替差益を受け取ることもできます。
通貨分散やコスト面を踏まえると、為替ヘッジなしを選んでおくのが筆者はベターだと考えています。
※本記事で紹介した個別銘柄については、あくまでも参考として申し述べたものです。投資の最終決定は各自の責任でお願いいたします。