このほか、自動決済のコンビニエンスストア「Amazon Go」の一部店舗を閉鎖し、Amazon Freshの新規出店を中断した。Amazon Freshは20年時点で200店舗以上を出店する予定だったが、コロナ禍で計画を断念した。Amazon Freshの店舗数は現在、80店弱にとどまっている。

 だがこうした緊縮モードは、ほぼ過去のものとなった。アマゾンは投資モードに戻り、経営資源をAmazon Freshに注ぎ込み始めている。

「食料品業界で成長するためには実店舗が必要」

 23年後半にカリフォルニア州とイリノイ州の一部の店舗で、顧客体験を改善した新しい形態をテストした後、その成果を新店舗に導入している。ジャシーCEOと幹部らは、食料品事業をさらに成長させるためには、実店舗の数を増やす必要があると述べている。

 米証券大手ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループのデータによると、1兆6000億ドル(約228兆円)規模の米国食料品市場における、オンライン販売の売上高はわずか11%にとどまる。オンライン販売が41%を占める家電などの他のカテゴリーと比較して、はるかに低い水準である。同社のアナリストは「食料品業界で大きく成長するためには、実店舗を持つ必要がある」と指摘する。

 アマゾンは24年4月、大型店戦略の一環として、「Just Walk Out(ジャスト・ウォーク・アウト)」と呼ぶレジなし精算システムを廃止すると発表した。それに代えてレジ精算不要のショッピングカート「Dash Cart(ダッシュカート)」の利用を拡大する。前者では買い物の途中で金額がいくらになるか分からず、スーパーのように多くの商品を購入する形態の店舗には不向きと指摘されていた。一方、後者のDash Cartにはディスプレーが備わっており、買い物途中で合計金額を逐次表示する。

 アマゾンのジャシーCEOは24年4月の決算説明会で、「ほぼすべての面で、以前よりはるかに改善されている。まだ初期段階であり解決すべき課題もいくつかあるが、現状には満足している」と述べた。