2021年にロンドンにオープンしたAmazon Fresh(写真:Eyevine/アフロ)
米アマゾン・ドット・コムはこれまで食料品の小売事業に数百億ドルを投じてきた。だが業界全体を見ると、同社の食品小売事業の規模は依然小さく、米国で上位10社にも入らない。米CNBCが2月19日に報じた。
食品小売事業に巨額投資
CNBCによると、アマゾンは可能な限り低価格で、考えられるすべてのものを最短時間で顧客宅に届ける基盤を構築するためにほぼ30年を費やしてきた。 ほぼすべての点で、これは企業の歴史上で最大の成功の1つだという。アマゾンは現在、電子商取引(EC)市場で揺るぎない地位を確立しているが、同社には1つだけ厄介な分野がある。それが食料品だという。
米国食料品小売市場の規模は7500億ドル(約86兆2300億円)。アマゾンはこの市場で巨大な存在になることを目指し、「Prime Now(プライムナウ)」や「Amazon Fresh(アマゾンフレッシュ)」「Amazon Go(アマゾンゴー)」などのサービス/実店舗事業を手がけてきた。2017年には、それまでの同社によるM&A(合併・買収)の10倍以上に上る137億ドル(約1兆5800億円)を投じ、高級スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ・マーケット」を傘下に収めた。
先ごろは、21年6月末までの1年間におけるアマゾンの世界流通総額(GMV=Gross Merchandise Value)が6100億ドル(約70兆1300億円)となり、米ウォルマートの5660億ドル(約65兆700億円)を上回ったと報じられた。
米食料品小売市場で10位以下
だが、米市場調査のニューメレーターによると、21年12月中旬までの1年間の米食料品小売市場における「Amazon.com」と「ホールフーズ」のシェアは合わせて2.4%にとどまる。これに対し首位のウォルマートは18%。アマゾンは依然、米国の食料品小売市場でニッチな存在だと指摘している。
販売額に基づくデータによると、上位10社にはウォルマートのほか、米スーパーマーケットチェーン大手クローガー、米会員制卸売り大手コストコ・ホールセール、ウォルマート傘下の会員制スーパーであるサムズ・クラブ、米ディスカウントストア大手のターゲットなどが入る。Amazon.comとホールフーズのシェアはそれぞれ1.3%と1.1%で、順位は12位と13位だった。
競争は至る所にあるとCNBCは報じている。ウォルマートやターゲット、クローガーなどの小売大手は新型コロナの感染拡大を背景にオンライン販売の拡大に力を入れた。一方、宅配代行大手インスタカートやウーバーテクノロジーズの料理宅配代行事業ウーバーイーツ、料理・食料品宅配大手のドアダッシュ、超速宅配サービスのゴーパフなどは、アマゾンの得意分野である即時配達分野への投資を拡大している。
実店舗売り上げ、2年前から減少
アマゾンが先ごろ公表した年次報告書(FORM10-K)を見ても、食品小売事業の成長が鈍化していることが分かる。
ホールフーズやレジ無しコンビニエンスストアのアマゾンゴー、食品スーパー「Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)」などの実店舗の21年売上高は計170億7500万ドル(約1兆9600億円)。前年比で5.2%増だったが、2年前と比べると0.7%減少した。21年のアマゾンの全売上高、前年比約22%増の4698億2200万ドル(約54兆円)に占める比率はわずか3.6%だ。
CNBCによると、創業者のジェフ・ベゾス氏が最高経営責任者(CEO)を務めていたころ、「アマゾン帝国」の一部である食品小売事業について、株主はあまり心配することはなかった。同社の株価は、ECとクラウドサービスの成長に後押しされ、過去5年間でほぼ5倍になっていた。
しかしベゾス氏の後任としてアンディ・ジャシーCEOが就任した21年7月から状況が変わった。その間に株価は約13%低下。CNBCの別の記事によると、アマゾン株は21年にわずか2.4%の上昇にとどまり、米アップルや米メタ、米ネットフリックス、米アルファベット、米マイクロソフトなどの他の米テック大手の中で最も低い上昇率だった。
こうした株価パフォーマンスの悪化は「投資家に、彼らが嫌いなものを探し始める理由を与えるかもしれない」とCNBCは報じている。米ロングボウ・アセットマネジメントのジェイク・ダラーハイドCEOは「アマゾンはクラウド、EC、エンタメがすべて。同社にとって食料品ビジネスは高くつく趣味のようなものだ」と指摘している。
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