7月5日付でCEOを退任した、ジェフ・ベゾス氏(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムの創業者であるジェフ・ベゾス氏が米国時間7月5日付でCEO(最高経営責任者)を退任した。今後も取締役会長として同社に残るが、日常の経営業務から離れ、自身が設立した環境基金や宇宙開発ベンチャー、自身がオーナーのワシントン・ポスト紙などに時間を振り向ける。

 アマゾンの設立は1994年。翌年から書籍のネット販売でサービスを開始し97年に上場。ベゾス氏は創業以来CEOを務めてきた。同氏はあえて目先の利潤を追求せず、先行投資を躊躇しない薄利精神と、従来の常識を覆す大胆な新サービスで同社を米国最大の電子商取引(EC)企業へと成長させた。創業から約四半世紀。同氏が築き上げた巨大企業アマゾンをデータで振り返る。

米国ECシェア40%で圧倒的な首位

 米JPモルガン・チェースのアナリストによると、アマゾンは商品取扱高の規模で、22年にもウォルマートを抜き米国最大の小売業者になる見通し。20年におけるアマゾンの流通総額(GMV)は前年比41%増の3160億ドル(約35兆1100億円)。これに対し、ウォルマートは同10%増の4390億ドル(約48兆7800億円)だった。「このペースで推移すると、アマゾンのGMVは22年にウォルマートを上回り、米国最大の小売業者になる」とアナリストらは指摘している。

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 また、米調査会社のイーマーケターによると、アマゾンの米国EC市場におけるシェアは約40%で、2位の米ウォルマート(約7%)や3位の米イーベイ(約4%)を大きく引き離している。

 アマゾンの米国におけるECシェアは特定の商品分野でさらに高まる。例えば、「書籍/音楽/ビデオ」では約83%、「コンピューター/家電」は約50%。「玩具/趣味」と「オフィス機器・用品」はいずれも45%以上のシェアを持つ。

クラウド市場の世界シェア、断トツの41%

 アマゾンと言えば多くの人が「ECの巨人」をイメージするだろう。だが、同社にはもう1つの主要事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」がある。このクラウドサービスは、もともと自社のEC向けシステムのために開発したものだが、06年にこれを他の企業に貸し出す事業を始めた。その規模は現在、競合テクノロジー大手を大きく上回っている。

 米調査会社のガートナーによると、コンピューティング資源やデータ保管、ネットワーキング機能を提供するサービスの世界シェアは、アマゾンが40.8%で世界首位。2位の米マイクロソフトの19.8%を大きく引き離すほか、マイクロソフトや中国アリババ集団、米グーグル、中国・華為技術(ファーウェイ)の合計シェアである39.5%も上回っている。

AIスピーカー、動画配信機器でも首位

 また、米ウォール・ストリート・ジャーナルが引用したシンガポールの調査会社カナリスのデータによると、21年1~3月期におけるアマゾンのAIスピーカー出荷台数シェアは25%でトップ。この後にグーグルの17%、中国・百度(バイドゥ)の15%、アリババの13%などが続いている。

 同紙は米調査会社のパークスアソシエイツのデータを基に、アマゾンの動画配信機器のシェアが過去数年で急上昇し、21年は米ロクと同率1位になったとも報じている。

世界正社員数127万1000人

 アマゾンの世界の正社員数は21年3月末時点で127万1000人。米国ではウォルマートに次ぐ第2位の雇用主だ。ウォール・ストリート・ジャーナルによるとアマゾンは翌日・当日配送の拡大に伴い物流施設の新規開設を着々と進めている。アマゾンの新規採用がこのペースで推移すれば、世界従業員数はあと数年でウォルマートを上回る可能性があると同紙は伝えている。

 同社は20年に世界で50万人を新規採用した。同年3~4月に計17万5000人の期間従業員を採用。同5月末にはその約7割に当たる12万5000人を正社員に登用すると明らかにした。同年9~10月には、北米の物流拠点で10万人の正社員と、10万人の期間従業員を追加採用することも明らかにした。21年5月にも北米の物流施設で7万5000人を新規採用すると発表している。経済回復に伴う労働市場の競争激化を背景に、早期に人員を拡充しEC需要の急増に備える構えだ。

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 同社はオフィス職の採用も積極的に進めている。20年9月には米国で大規模なオンライン就職説明会を開催。こちらは全米各地にあるオフィスや技術開発の拠点、本社などでエンジニアやマーケティング、人事、経理などの人材を募集するというもの。その募集枠は3万3000人だったが、その後の声明で38万4000件の応募があったと明らかにした。21年1月には米東部マサチューセッツ州ボストンの技術開発拠点を拡大し、今後数年で3000人超を新規雇用するとも発表。ウォール・ストリート・ジャーナルによるとアマゾンの米国従業員約95万人のうち、13万人がオフィス職だという。

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「地球上で最高の雇用主と地球上で最も安全な職場を目指す」

 ベゾス氏は21年4月15日、CEOとして最後の年次書簡を公開し、「地球上で最も顧客第一主義の企業」という従来の目標に加え、「地球上で最高の雇用主」と「地球上で最も安全な職場」を目指すと表明した。その上で、「発明家である私は取締役会長としてチームと共に働き、目標達成のために発明を通して協力していくことにワクワクしている」と述べた。

 「アマゾンは瑣末な事柄に柔軟だ。だがビジョンについては頑固だ。我々は心に決めたことで失敗したことはなく、新たな目標においても失敗はしない」とも述べ、強い決意を表明した。

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