(写真:Eyevine/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムは、直営のスーパーマーケットチェーンに導入している、「Just Walk Out(ジャスト・ウォーク・アウト)」と呼ぶレジなし精算システムを廃止する計画だ。米メディアのジ・インフォメーション米ブルームバーグ通信などが報じている。直営スーパー「Amazon Fresh」などの大型店舗では設置費用がかさむ上、買い物中に合計金額を把握できないなど、利便性の悪さも原因だったようだ。

直営スーパー「Amazon Fresh」刷新

 アマゾンの食料品部門シニアバイスプレジデントのトニー・ホゲット氏は、ジ・インフォメーションとのインタビューで今後出店する予定のAmazon Freshでは、Just Walk Outではなく、レジ精算不要のショッピングカート「Dash Cart(ダッシュカート)」に焦点を当てると述べた。

 加えて、年内には既存のAmazon Fresh店舗の大部分でJust Walk Outを撤去し、店舗を「バージョン2」に刷新すると明らかにした。

スーパーでは費用対効果低い

 アマゾンがJust Walk Outの開発を始めたのは10年以上前である。その後の2016年12月、このシステムを導入したコンビニエンスストア「Amazon Go」の1号店を米ワシントン州シアトルの本社屋1階で開いた。当初は同社従業員に限定した試験営業だったが、18年1月に一般公開した。

 このシステムでは、店内の天井と商品棚に設置した数百基のカメラやセンサーで顧客や商品の動きを捉える。顧客が買いたい物を棚から取ると、仮想ショッピングカートにその商品が入る。一度手に取った物を棚に戻せば、カートから削除される。その後、欲しい商品をすべて自分のバッグなどに入れて店を出れば自動精算される。

 これを実現するためには、コンピュータービジョンやディープラーニング・アルゴリズム、センサーフュージョンなどの技術を使うが、これらを大型店に導入するにはコストがかかる。ワシントン州にあるAmazon Freshの店舗面積は約2300平方メートル。これに対し、Amazon Goは約100~200平方メートルである。

 アマゾンは、こうして大規模設備を導入し、Amazon Goにあるような利便性を大型スーパーにも追求してきた。だが、顧客の反応はそれほどよいものではなかったようだ。Just Walk Outシステムには、駅の改札口のようなチェックイン/チェックアウトレーンがあるが、ブルームバーグによると、これに抵抗を感じる顧客も少なくない。

 スーパーマーケットがハイテクな自動販売機になってしまったと違和感を覚える顧客もいたという。さらに、レシートは自動清算後の数分~数時間後に利用者のスマホに届く。つまり、このとき初めて自分が支払った金額が分かる。こうした仕組みは、スーパーのように多くの商品を購入する形態の店舗では実用的ではないという批判もあった。Just Walk Outはコンビニでは便利だが、スーパーに向かなかったというわけだ。