幹細胞維持のカギを握る17型コラーゲンとは?

 17型コラーゲンとは、どうやら髪や表皮の幹細胞の維持に重要な役割を果たしている物質らしい。コラーゲンといえば身体を構成するタンパク質として知られていて、美容や健康維持に不可欠な成分でもある。幹細胞の維持に関わる17型コラーゲンとは、いわゆるコラーゲンとは少し趣の違うものなのだろうか。一連のメカニズムを明らかにした西村氏らの論文は、2011年に『Cell Stem Cell』と2016年の『Science』に掲載されている*4

*4Hair Follicle Stem Cells Provide a Functional Niche for Melanocyte Stem Cells

「17型コラーゲンは、通常のコラーゲンとは違って膜貫通性、すなわち細胞膜を貫通する蛋白で細胞外にコラーゲンの配列を持っています。これが幹細胞を細胞外マトリックスへと繋留し幹細胞が失われるのを抑えています。したがって17型コラーゲンが欠損すると、毛包内で毛包幹細胞と色素幹細胞の相互作用によって保たれている幹細胞維持機構が破綻するのです。その結果、白髪や脱毛を発症します」

「つまり17型コラーゲンが幹細胞の維持を介して、白髪と脱毛を抑制している。であれば17型コラーゲンは白髪や脱毛の予防や治療へと応用できるかという話になりますが、単に17型コラーゲンを補っても効きませんし、幹細胞を移植してもそのまま正着するものではありません。エクソソームなど成長因子を体内に入れる治療は、癌の発生を促すリスクもあり、十分な長期安全性が担保されていません」

図:17型コラーゲンが白髪と脱毛を抑制するメカニズム
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 17型コラーゲンをネット検索すると「頭髪の健康をサポート」などをセールスコピーとするサプリメントが販売されている。髪の悩みを抱えている人なら、飛びついてしまいそうな商品に思えるが、その効果はどうなのだろうか。

「その件については、私の大学のホームページでも注意喚起をしています。とても残念なことに、テレビニュースで紹介された私たちの研究成果を不当な仕方で引用し、誤解を与えるような販促活動をしている、化粧品や健康食品があるのです。どんなコラーゲンを飲んでもアミノ酸になるわけで、それが毛になる事実は確認できていません*5

*5【17型コラーゲン】に関連するとされる化粧品・健康食品等への注意喚起について

 健康食品にはよくある話だが、では、髪の毛の老化を防ぐ手立てはないのだろうか。