事件について中国・ネット民はどう反応したか

 9月18日午前8時ごろ、深圳の日本人学校の校門200メートルのところで、通学中の10歳の男児が刃物を持った男に襲われた。母親に電動自転車で送ってもらい、校門に向かうところで、母親の目の前の凶行だった。男は現場で取り押さえられ逮捕された。

 男児はすぐに病院に搬送されたが、腹部を刺されており、緊急手術を行うも、翌日に死亡が確認された。

死亡した日本人学校の児童が男に襲われた現場=9月19日、中国広東省深圳市(写真:共同通信社)

 事件が9月18日に起きたのが偶然だったのか、犯人の動機に反日情緒が関係あったのか、それに関する情報はこの原稿執筆時点では得られていない。

 香港・星島日報などによれば両親は日中の国際結婚カップルであり、男児は本来なら日中両国をつなぐ架け橋となるような存在であるはずだったが、もしその命が、中国の歴史教育の影響を受けた反日情緒が関係していたとしたらこれほど皮肉なことはない。

 日本メディアは、現地の中国人もこの犯行に対し憤り、男児の犠牲を悼んでいることを伝えている。だが微博などでこの事件を報じるニュースに付いたコメントをみると、無辜(むこ)の子供が犠牲になった、ということで同情の声はもちろん多いのだが、やはり反日教育や日中関係の変化について言及する意見も散見されている。

 ある微博コメントはこう指摘している。

「コメント削除を覚悟の上で書くけど、深圳含む国内の大都市では外資を吸引し、外資を留めようとしているが、一方で、民衆と子供たちに対しては西側や日本に抵抗せよ、反対せよといった宣伝と教育を行っている。我が家の娘ついていえば、10代の小学生だが、日本の話題を出すと、異様な興奮状態になって、いろんな罵り言葉を言い出す。理由を聞くと学校で先生たちが、日本は核汚染水で海を汚染し、そのせいで我々は海鮮を食べられなくなった、日本人たちは毒で我々中国人を死なそうとしているのだ、日本人は本当に卑劣だ、などと教えているのだという」

「数日前に新学期が始まり、最初の日は学校で労働を行う日だったが、娘が家に帰ってくるなり『今日は大事件があって、とても楽しかった』という。娘によればクラスメートと一緒に抖音(中国版TikTok)にアップされていた日本大使館かどこかの電話番号に、順番に電話をかけて日本人を一方的に罵ってきたのだという。相手側は娘が誰かもわからなかったようだ」…

 犯人への擁護、同情のコメントもあった。

「犯人は人間性を失ったが、愛国者である」

「犯人を擁護する書き込みをすると削除される」…

 この事件は中国政府にとって大きな外交的打撃になるだろうという見立てとともに陰謀論のコメントもあった。

「この事件で一番得をするのはまもなく自民党総裁選を迎える自民党だろう。自民党総裁になれば必ず首相になる。この事件で、より対中強硬的な首相が誕生することになるだろう」

「日本側の自作自演ということか」

「日本は最も反中的国家で、地政学上からいっても、統一された強大な中国を最も望まぬ国だ」

「日本が反省しないから、こういう事件が起きたのでは?」

「英国とフランスは和解に100年かかったのだから日中韓も100年かかる」

「これは仇恨教育の呪詛返しだ。(反日教育をやりすぎて、中国が窮地に追い込まれている、の意味)」…

 こうしたコメントをざっくり眺めるだけでも、この事件を非難するにしても、犯人を擁護するにしても、犯行を反日、仇日の感情と関連づけてみる人は相当数いるのだ。

 しかも、同様の事件が3カ月前にもあったのだ。中国江蘇省蘇州で今年6月、中国人男が、スクールバスをバス停で待っていた日本人母子を刃物で切り付けて襲うという事件があり、この時バススタッフの女性・胡友平さんが、男がスクールバスに乗り込もうとするのを身を挺して防ごうとして命を落とした。3カ月の間に2度、現場は日本人学校。これを偶然といえるだろうか。