介護福祉士に准看護師に類似した資格体系の検討を

 なお、「准看護師」は保健師助産師看護師法6条により、「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定する(傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う)ことを業とする者」となっている。国家資格ではない都道府県知事が発行する「准看護師」資格は2年間の就学(准看護学校)を経て試験に合格すれば取得できる。

 一方、国家資格である介護福祉士は、2年間の就学(介護福祉士養成校)を経て試験に合格すれば取得できる。もちろん、3年間以上の実務経験ルートによる取得コースもあるが。

 例えば、案として「療養介護福祉士」の就学期間を3年として、准看護師に類似した資格体系とすることも考えられる。なお、この「療養介護福祉士」資格は、あくまでも養成校卒業者のみ受験資格が得られることとして、実務研修のルートは想定していない。なぜなら医療行為の一部を担うには、かなりの研修・実習などが必要だからだ。

 ただし、経過措置として一定期間、介護福祉士として従事している者を対象に1年間の養成機関(各種学校)を暫定的に設けることも考えられる。

 現行の介護職員の資格には「初任者研修修了」(旧ヘルパー2級資格)と「介護福祉士」(国家資格)という2種類がある。そこに「療養介護福祉士」(国家資格)という新資格を1つ設けるイメージである。

出所:『介護格差』(岩波新書)
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 現在、介護福祉士を養成する専門学校等は減少傾向となっており、入学者もかなり減っており外国人留学生の割合も一定数となっている。このままでは養成校ルートからの介護福祉士の有資格者は目減りするばかりだ。しかも、ここ数年は外国人留学生すら少なくなっている点も注目される。「療養介護福祉士」資格コースを設けることで、介護福祉士養成校の再興も模索できるのではないか。

出所:『介護格差』(岩波新書)
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 昨今、人手不足により介護人材を採用できない事業者は、「介護人材紹介業」を活用して人材を確保するケースが目立っている。しかし、厚労省「医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査」(2019年12月)によれば、採用1件あたりの紹介事業者に支払った手数料額はケアマネ、ヘルパーの場合平均で64万2000円、50万1000円と高額化している。

 この費用は介護報酬を基本とした財源から賄われており、法令的には問題ないものの、介護報酬の一部が介護人材紹介業へ流れている構図だ。確かに、介護人材紹介業の役割・機能は認められるべきではあるが、深刻化する介護人材不足に乗じたビジネスチャンスとしての職業紹介業の事業展開が目立ち始めている。

 その意味では、過度な(公費の)資金が流れないようにするため、例えば、手数料等の上限額規制を強化すべきであろう。

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