政治が嫌になった現在のティール

:トランプとバンスとティール、彼らの奇妙な三角関係には後日談があります。

 大のメディア嫌いで知られるティールは2023年11月、「反トランプ」の論壇誌The Atlanticの記者に単独インタビューをさせます(「Peter Thiel is Taking a Break from Democracy」。

 ティールはここで、「2024年の選挙では共和党の政治家たちにびた一文払わない」と述べています。

 ティールがトランプとの絶縁を宣言した背景には、22年の上院選の後にトランプから電話がかかってきて、バンスが当選した成功報酬として、1000万ドルから1500万ドルの政治資金を要求されたことがあります。

 ティールがこの申し出を断ると、トランプは「とても悲しい(vary sad)」と繰り返し、その後、ティールのことを「くそ野郎(fucking scumbag)」とののしっているとのうわさが聞こえてきました。

 トランプに肩入れしたことで、ティールのビジネスには色々な面倒が生じていました。ティールは同性婚しているのですが、夫からも「彼らにはこれ以上、お金を渡したくない」と言われてしまったとのことです。

 このインタビューによると、2023年の時点でティールとトランプの関係は破綻していました。それにもかかわらず、イーロン・マスクなどの「テクノ・リバタリアン」たちはなぜ共和党を支持し、トランプもティールの「元部下」であるバンスを副大統領候補に選んだのか。その話は後編で。

【後編】【米大統領選】机上の平等主義にうんざり、右傾化するシリコンバレー…テクノ・リバタリアンはなぜトランプ支持?