「45-45」や「50-50」の可能性も

 今季の大谷選手の打撃成績をみると、40本塁打はリーグトップで、ア・リーグで本塁打王のタイトルを獲得した昨季に続き、ナ・リーグでの本塁打王へ突き進む。この日の試合終了時で、92打点はトップに2差の2位、打率.292も6位につける。盗塁数も2位だ。ほかにも長打率で1位に立つなど、ナ・リーグ西地区の首位に立つチームを牽引する堂々たる数字となっている。

 今季はすでに、メジャー通算200本塁打や4年連続30本塁打、通算で全30球団からの本塁打、球団新の10試合連続打点などの記録を達成している。今後も、メジャー史上初の「45本塁打、45盗塁」、その先の「50本塁打、50盗塁」などへ、残り試合数もまだ残っている。

 そして、その先に注目されるのが、メジャー史上初となるDH専任でのリーグMVPの獲得だ。

 DHでのMVPが過去にいないのは、守備での貢献度がないことが影響するとされる。MVPは全米野球記者協会(BBWAA)の記者30人による実名での投票で決まる。それぞれが、MVPにふさわしいと考える上位10選手を記入し、順位ごとに与えられるポイントの合計で決まる。

 過去のDH専任の選手では、1993年のポール・モリター選手(ブルージェイズ)、2000年のフランク・トーマス選手(ホワイトソックス)、05年のデビッド・オルティス選手(レッドソックス)の2位が最高で、オルティス選手(同)は翌06年に本塁打と打撃の2冠をマークするも3位だった。

 それだけ「壁」が高いDH専任でのMVPだが、「足」も加えた総合的な打撃力と、地区3連覇を目指すチームへの貢献度がどう評価されるのかが注目される。

 大谷選手はすでに投球練習などを行い、来季からの投手復帰を見据えており、再び「二刀流」での活躍が期待される。「打者・大谷」に専念した今季にどんな成績をメジャー史に残し、ファンの記憶に刻むか。いまだ「限界」「不可能」の文字が見当たらない30歳のプレーから目が離せない。

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。

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