この猫とは、北部山岳地帯の町で出会いました。物干しの支柱につながれているので、猫が歩くうちにだんだんと紐が支柱に巻き付けられていきます。猫を抱き上げ逆方向にぐるぐる回って直してやったのですが、その後も猫は一方向にぐるぐる回っていました。

 すごく立派な白い髭です。大公国のタキシード猫なのに、鼻水を垂らしているような柄が、愛嬌たっぷりでたまりません。

「ここは日が当たって眩しいからまた後でね」。眩しそうな顔でこちらを見た後、植え込みの中へ入っていきました。