今年度末に高速道路の深夜割引制度が大幅に変わる。物流には深夜労働を事実上強制し、乗用車には割引の廃止に近いというネガティブインパクト満載の制度変更だ。ただでさえ世界でぶっちぎりに高い高速料金が自動車ユーザーにさらに重くのしかかることになる。果たして日本の道路行政はどこへ向かうのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
従来の深夜割引制度からどう変わるのか
お盆や年末年始など、休暇に長距離移動するマイカー族にとって頭が痛いのは、世界一高額な日本の高速道路料金。それを少しでも安く抑えたいというのは利用者の切実な願望だが、その最重要手段だった深夜割引制度が今年度末に大幅見直しされることが確定した。
今年7月12日に高速道路会社が発表した制度のディテールは次の通り。従来の深夜割引は料金所を午前0時~午前4時の4時間の間に通過するか、その時間をまたいで高速道路に滞在していれば通常料金から一律で30%OFFというものだった。
新制度は割引時間帯を午後10時から翌日5時までの7時間に拡大するが、今までのようにその時間帯を少しでもかすっていればOKというのではなく、その時間帯に実際に走った分のみが割引対象となる。これが最大の変更点だ。
ならば新東名を爆走して少しでも距離を稼ごうと考える人も出てきそうだが、そこにもきっちり網がかけられている。割引されるのは乗用車の場合で平均105km/hで走った距離に限られ、それを超えた分は通常料金となる。さらに4時間以上の利用の場合、30分の休憩時間が差し引かれる。
還元方法も変わる。現在は正規料金からダイレクトに30%が割り引かれて請求されるのだが、新制度においては支払うのはあくまで正規料金。割引分はというと、正規料金との差額をETCのマイレージサービスのポイントとして後日付与するのだという。
この制度変更、名目はトラックドライバーの労働環境の是正、サービスエリアや料金所におけるトラックの滞留解消のためということになっているが、新制度では午後10時から翌朝5時までの間にできるだけ距離を稼がなければならず、長距離トラックは名実共に深夜ぶっ通しで高速道路にくぎ付けにされることになる。これでは単に労働環境の非人道性が増すだけだろう。