渡航決断の決め手になった、家族という存在

 3人とも自らのキャリアが中断されることについて、憂慮していた。後押しする声もあれば、彼らのキャリア設計を心配し反対する声もあり、そうした周囲の意見にも影響を受けていた。うかがえるのは、同行しない選択肢もあり得たということだ。実際、柴田さんが2度にわたり拒絶したことで、妻は赴任を断念せざるを得なかった。ただ、最終的には家族の存在が渡航決断の決め手になっていた。3人が語る。

 今回については、小1の子どもが母親と離れるなんて、絶対にあり得ないっていうのも大きかったですね。かといって、妻子だけで行かすわけにもいかないし。(柴田さん)

 妻と一緒にいるほうが何だかんだいいだろうと、家族なので。妻も(海外で働くということで)大変だろうからサポートできると思いますし。妻も何年向こうにいるか分からないので、別々に暮らしていると、家族でいる意味がなくなっちゃうなっていうのがあって。(山本さん)

 (妻の留学は)期間限定の2年間だし。最初(決断したの)は1年(だけ一緒に暮して、自分だけ戻ってくるという決断)ですね。キャリアを止めたくないと思ったので。それと、1年いたら、もういいかなみたいなのが多分ちょっとあったと思います。妻子は現地に置いて、(1年後には)1人だけ帰ってくるつもりでした。(佐藤さん)

【前編】
妻が海外駐在、帯同して稼ぎゼロの「駐夫」の実態は…データが明かす「新しい夫婦」のカタチ

妻に稼がれる夫のジレンマ――共働き夫婦の性別役割意識をめぐって 』(小西一禎著、ちくま新書)
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