「駐夫」になる前、日本で働いていた当時の男性の本音

 遅くまで残業して、一生懸命やってる奴のほうが評価されるわけなんですよ。朝早く出社して、何かトラブルを自分で起こしたとしますよね。そのトラブルを一生懸命、自分で直してるような人です。
 ところが、トラブルを未然に防ぐような人は、評価されないんですよ。「あいつ、楽にやってるな」っていうふうに思われるんです。ミスをしてしまって、じゃ、深夜まで一生懸命直そうと。夜遅くまで残って、そうした仕事をしているほうが評価されるっていうのがくだらないなと思っていて。(水沼さん)

 当時は、長い時間働くのが美徳みたいに考えていましたが、(帰国した後は)まったくなくなりましたね。まったくない。まったくないです。まったくない。いかに短い時間で、いかに最大の成果を出すかっていうことにしか興味がなくなりました。(佐藤さん)

 渡米前って無限に時間があるかのような働き方をしてしまって。拘束時間は長いのに(妻よりも)年収が低いっていうような状況が、すごくコンプレックスというか。
 良くないよなと思っていたところがあったので。(藤原さん)

 海外に同行した男性たちは、日本で働いていた当時、長い時間働くのを当然のことと考えていた。そうした現状に疑問や不満を抱きながらも、1日1日が過ぎていく。中には、超多忙時の一例として、「朝6時とかに家を出て、帰ってくるのが3時とかだった。土日も朝回りと夜回り(早朝や夜に取材関係先の自宅などを訪ね、話を聞き出すこと)を大体毎週していました」(大野さん)と話した人もいた。

 平日は子育てに充てる時間がまったく取れず、疲れが抜けないまま週末に公園に連れて行くのが精一杯な父親たち。「いつまでも、こんな働き方をしていて、良いものなのか」。

 こんな疑問がちらつき、退社や転職が脳裏をよぎる。そんな彼らに、「家のことは何とかなるから、辞めるなら辞めてもいいよ」、「自分も働いているし、暮らすには困らないから」などと声をかける妻たちがいた。ただ、実際に行動にまで踏み切った人はいなかった。