ムダな会議に飽き飽きするビジネスパーソンは多い(写真:Andrey_Popov/Shutterstock.com)

仕事が思うように進まず、「自分は生産性が低いのでは」と感じる人もいるだろう。そんなときに手に取ってほしいのが、今回紹介する『とにかく可視化―仕事と会社を変えるノウハウ―』(菊池明光著、新潮新書)だ。実践にもとづいて確立された仕事術とはどのようなものなのか、そのノウハウを見ていこう。

(東野 望:フリーライター)

過去の経験から生まれた可視化ノウハウ

「社員を教育するシステムが整っておらず、なかなか業績が上がらない」「会議を頻繁に行ってはいるが、現場への効果的なフィードバックができておらず、業務が改善されていない」…。

 職場における悩みはさまざまだ。なかには何が問題なのかすら明確にわからず、ただ仕事がうまくいかないことを嘆いているばかりのケースもあるだろう。

 本書の著者である菊池明光氏曰く、上記のような仕事のやりにくさを解消する手段として有効なのが“可視化”だという。

 菊池氏は、リクルートで13年間勤務したのち、2社のベンチャー企業を経て、その名も「可視化」という会社を設立。大手企業から中小企業まで「営業ノウハウ可視化」と銘打ったコンサルティングに従事してきた。可視化というテクニックは、業種や人材レベルを問わずさまざまな環境で適用できる仕事術だと主張する。

「聞くだけ」の会議が生産性を低くする

 多種多様な仕事の中でも、可視化のプロセスが特に効果を発揮する対象として挙げているのが会議だ。ディスカッションをはじめとする話し合いの場は、生産性が低くなりやすい。その理由について、菊池氏は「誰が何を言ったのか耳だけで記憶しながら思考を巡らせて」いるからだと語る。

喋っていると、会議をしている本人たちは仕事をした気になってしまいます。一方、議論の流れが目に見える形になっていなければ、あるいは結論だけがあって背景が分からなければ、その議論が形に残ったとは言えません。形が残らなければ、その議論や会議は“やっていなかった”と同じ。

 たくさんの意見があるなか、一度聞いただけですべての内容を理解できる人はそれほど多くないだろう。会話した内容を可視化しなければ、結果として無意味な時間を過ごすことになってしまう。