(写真:Abaca/アフロ)

 電子商取引(EC)への積極投資で巨大企業となった米アマゾン・ドット・コム。だが同社は今、小売りや物流分野よりも、クラウドコンピューティングやAI(人工知能)インフラへの投資を優先しているようだ。

クラウド事業AWS、投資急拡大

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(AWS)によれば、アマゾンは今後10年でデータセンターに1000億ドル(約16兆円)以上を投じる計画だ。これは巨額投資で知られるアマゾンとしても驚異的な投資規模だという。

 アマゾン傘下のクラウドコンピューティング事業、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はこれまでデータセンターを次々と開設してきた。だが幹部によると、最近はAIブームをきっかけとした需要増加に対応するため、投資を急拡大させている。

 2023年におけるアマゾン全体の設備投資額は、主に物流倉庫や輸送関連の支出抑制によって減少に転じた。その一方、AWS向けインフラ支出の割合は急増している。このことは、物流事業の拡張よりも、最先端のクラウド設備への投資がアマゾンの成長にとってより重要になったことを意味するという。

 米調査会社のデローロ・グループ(Dell'Oro Group)によると、アマゾンの総設備投資額に占めるデータセンター設備投資額の割合は昨年、過去10年で最高の53%になった。アマゾンはAWSインフラへの支出が24年も高水準を維持するとみている。これを裏付けるかのように最近は、同分野への投資計画を数多く発表している。

アジアや中東、欧州など世界でクラウド拡大

 24年6月には、今後15年で台湾に数十億ドル(数千億円)を投じ、データセンターを建設すると発表した。AWSのインフラ・リージョンを25年初めまでに台湾で立ち上げ、台湾およびアジア太平洋地域におけるクラウドサービスへの高い需要に応えるとしている。