1.ウクライナとロシアの空中を制する戦い
空中を制する戦いには、3つの戦いがある。
その1:戦闘機同士の戦い
これは、戦闘機がミサイルを発射して、敵機を撃墜するという空中戦となる。現代戦では、戦闘機が交戦するのは、百数十キロ遠方にいる敵の戦闘機である。
勝敗を決めるのは、ミサイルの射程、誘導方式とそれらの性能だ。
しかし、それはあくまで目標の種類とその位置を事前に特定できるか次第であり、空対空ミサイルの射程が長くなればなるほど、その重要性は増す。
戦闘機は、百数十キロも離れた敵機の情報をどこから得るのか。
それには早期警戒機から受ける場合と、戦闘機が自ら捜索して見つけ出す場合がある。
実際の戦闘では、ミサイルを発射する前の敵機の種類や位置の情報収集とそれらの伝送が決め手となる。
その2:防空ミサイルによる戦闘機への攻撃
戦闘機は、敵の防空ミサイルが存在している限り、その射程内を自由に安全に飛行することはできない。
しかし、防空ミサイルには弱点もある。
レーダーが戦闘機を捜索するために戦線に近づきすぎると、航空攻撃やミサイルの餌食となる。
よって、近づく場合は電波を放出する時間を極力短くして、発見されるのを避けなければならない。
その3:ミサイルによる防空兵器への攻撃
戦闘機を地上から撃墜できるのが防空兵器であるが、その防空兵器を破壊できるのは、弾道ミサイル(地対地ミサイル)攻撃である。
弾道ミサイル等は、防空兵器により撃墜される場合もある。両者のどちらが優越するかは、それぞれの兵器の性能の優劣で決定される。
だが、百数十キロ以上も離れた目標である敵機や敵の防空レーダーを破壊する前に、それらの情報をキャッチして、種類や位置を特定することが必要である。
この情報がなければ、どこに向けてミサイルを発射すればよいのか分からないからである。
その情報を入手するには、平時に各種レーダーで目標情報を取ること、またはエリント衛星(電子情報収集衛星)から電子情報を取ることが必要となる。
さらに、その電子情報を解析して、それらの種類を特定しておかなければならない。
これらの情報を基に、ミサイル攻撃の前に兵器の種類とその位置を特定するのである。
図 ウクライナの電子情報収集と伝送イメージ