(英エコノミスト誌 2024年6月29日号)

英労働党のキア・スターマー党首(6月27日撮影、写真:ロイター/アフロ)

労働党が次の政権を担わなければならない理由

 静かな選挙戦だけに恐らく気づかれていないだろうが、保守党政権が14年続いた英国では労働党が勝利を、それも過去の記録を更新するような大勝利を収めようとしている。

 本誌エコノミストが大事にしている考え方に完全に同意する政党はない。この国における経済面のコンセンサスは、リベラルな価値観――自由貿易、個人の選択、国家介入の制限――から離れてしまった。

 だが、選挙とは可能な範囲内で最善の選択を行うことを目指すものであり、今回の最善の選択がどのようなものであるかは明らかだ。

 7月4日に投票する権利がもし本誌にもあったなら、本誌も労働党を選ぶ。

 なぜなら、英国が直面している最大の問題――経済成長が慢性的に実現されず、この国を弱らせていること――に取り組む可能性が最も高いのが労働党だからだ。

英国の有権者に与えられる選択肢

 最初にほかの政党を検討してみよう。いくつかは投票の候補からすぐに除外できる。

 まず、スコットランド民族党(SNP)は英国を統治ではなく分断したがっている。緑の党を見ると、学生運動が厳格な政治のように見えてくる。

 ナイジェル・ファラージ氏の率いる新党「リフォームUK」は英国の没落を食い止めるべく奮闘していると言っているが、同党が提示している熱狂的かつ排外的なビジョンは、まさに衰退を加速させるだろう。

 自由民主党(自民党)はどうか。本誌は2019年に同党を支持したが、その時の理屈はもう無効だ。

 当時は、ボリス・ジョンソン氏に率いられた保守党がブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)のことで頭がいっぱいで、労働党が極左のカリスマで孤立していたジェレミー・コービン氏を党首に据えていたため、自民党しか選ぶことができなかった。

 自民党は今でも優れた政策をいくつか提唱している。亡命希望者の就業を認めるとか、地価税を新たに導入するといったものがそれに当たる。

 だが、同党は以前よりも貿易に懐疑的になっており、各種の計画については地域住民のエゴを支持する傾向がさらに強くなっている。

 政権の一角を担う信頼できる党になりたいと思っておらず、リベラル政党としてかろうじて信用できるにすぎない。