フレクジット以上に懸念されるフランスの政治リスク

 今後、フランスについて懸念されるのはそうした極端な展開ではなく、財政ルールの適用などを巡って、フランス国民議会が欧州委員会と鞘当てを始める展開だろう。こうした状況の中、フランス国債の格下げが利回りを押し上げ、これを見てユーロ売りが強まるという地合いがしばらく続く可能性はある。

 フランス政治の中心はあくまで外交・国防を司る大統領だとしても、内政は首相と閣僚が司る。その首相・閣僚の任命権並びに議会の解散権を大統領が持つ以上、大統領から首相へのけん制は常に効いた状態ではある。しかし、その議会が提出する法案に対して大統領は拒否権を持たない。ここに政局が流動化しやすい余地がある。

 例えば、RNはウクライナ戦争からは極力距離を取るべきとの立場だが、国防はあくまでマクロン大統領の所管であり、ここに大きな変化は見込まれない。一方、内政に関するテーマとしてEUの財政ルール(例えば安定成長協定)への反発やこれに伴う拡張財政路線の強弁、移民規制の強化などは考えられる。

 象徴的な政策として付加価値税の引き下げは公約として掲げられているが、当然、パンデミックで毀損した財政状態を踏まえれば、EUの規則(≒SGP)とはバッティングする展開が予見される。

 この点、6月19日には欧州委員会がフランスとイタリアなど加盟7カ国(フランス、イタリア、ベルギー、スロバキア、マルタ、ポーランド、ハンガリー)について域内の財政規則を超える財政赤字を抱えているとして、是正措置である過剰財政赤字手続き(EDP: Excessive Deficit Procedure)の開始を欧州理事会(EUの最高意思決定会合)に勧告している。

 拡張財政路線を主張するフランスの極右政党・国民連合(RN)が議会を掌握する展開が視野に入る中、市場としては無視できない問題に発展する恐れがある。この点は長くなるため、次回以降の本欄で別途解説させて頂きたい。

 ちなみに、RNばかりに注目が集まっているが、これに次いで高い支持を得る左派勢力(統一会派)も最低賃金見直しなどに象徴される拡張財政路線を打ち出している。左右両極が国民の歓心を買うためにばら撒きを主張する状況にある。こうした勢力が議会運営を仕切るようになった場合、親EUに身を投じてきたマクロン大統領にとっては承服しかねる展開であり、一部で浮上する辞任観測も全く根拠がない話ではない。