世の中にはビジネス書が氾濫している。写真はイメージ(写真:alejandro dans neergaard/Shutterstock.com)

人生でかなりの時間を費やす「仕事」。その向き合い方に苦戦している人は少なくないだろう。現状を変えたい人に読んでほしいのが、今回紹介する『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』(上出遼平著、徳間書店)だ。テレビディレクター・プロデューサーとして活躍してきた上出氏が考える“仕事術”には、現代社会で生き残るためのヒントが詰まっている。

(東野 望:フリーライター)

仕事での成功がすべてではない

 上出氏は、世界各地の危険な環境で暮らす人々の食事に密着したテレビ東京のドキュメンタリー番組『ハイパーハードボイルドグルメリポート』を企画するなどしたことで知られている。数々の実績を残してきたことから独自の仕事術を持っているように思えるが、同書の冒頭ではそんな期待を裏切るかのように、こう切り出している。

多くの「仕事術」は読者に対して、「こうすればうまくいく!」と語りかけ、それによって得られる安心感に金を払わせます。私はそれをほとんど詐欺だと思っています。

 以前から「仕事術」を説く書籍の執筆依頼はあったものの、彼自身に上記のような考えがあったため断り続けてきたそうだ。

様々な業界の第一人者が「仕事術」の本を出しています。しっかり読めばわかりますが、どれもこれも概ね同じ内容です。「本当に重要なことは書かれていない」か、あるいは「当たり前の(だけど真似できない)ことが書かれている」かのどちらかです。

 上出氏によれば、本当に重要なのは仕事において成功を収めることではなく、今の生き方の先に“幸福”があるかどうかだという。

自分であることを捨てずにこの世界で生きていくための力をどうやって手に入れるか、その方法を示すのが本書の目的です。

 自分がどのようなときに幸せを感じるのかを見極めることこそ、主体的に人生を歩むための第一歩なのだという主張だ。

“ズルをしない”ことがステップアップへの近道

 同時に、仕事で活躍できる機会を得たいと考えているなら、まずは“ズルをしないこと”が重要だと強調する。

 上出氏曰く、社会には「絶対にうまくいく秘訣」のようなものは存在しない。その一方で、最低限こなさなければならないことはあふれている。