(写真:Pixel-Shot/Shutterstock)

「50代は老いの思春期」と言われる。体力の衰えや脳の老化現象もはじまる。男も女も性ホルモンが減少し、疲労感や倦怠感、抑うつ症状といった「更年期障害」が生じる場合も少なくない。精神科医の和田秀樹氏は、こうした状況は「うつ病」になる可能性を高め、放置しておくと症状を悪化させてしまうと警鐘を鳴らす。うつ病にならないためには何をすべきか。「男性ホルモン」がカギを握っている。

(*)本稿は『50代うつよけレッスン』(和田秀樹著、朝日新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

■和田秀樹の「50代うつよけレッスン」
(1)「うつ病」は50代が危ない!男性ホルモンの減少が記憶・判断力の低下、疲労感・不眠・イライラ・抑うつ感などを招く
(2)50代になったら「肉」を食え!注射や塗り薬などで男性ホルモン補充もいいが、食生活でも若さを取り戻すには
(3)肉だけじゃない!ホルモンを活性化させる食べ物とは?がんやうつを予防するにはコレステロール値は下げてはいけない ←いまココ

ホルモンを活性化させる食べ物は?

 前回、50代になったら肉食になることをお勧めしましたが、うつ症状が出ている人は食欲が落ちるだけでなく、肉類をあまり受け付けなくなることがあります。うつ病の患者さんのなかには、「肉なんてムリ、あっさりしたものしか食べられない」という人も多いです。

 しかし、そのために余計うつ症状が進んでしまうこともあるのです。

 ですから、うつ症状が出る前からしっかり肉類を摂っておいたほうがいいでしょう。

和田 秀樹(わだ・ひでき) 1960年、大阪府生まれ。精神科医。立命館大学生命科学部特任教授。1985年、東京大学医学部卒業。長年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。主な著書に、『感情的にならない本』(PHP文庫)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『プラグマティック精神療法のすすめ』(金剛出版)、『70代から「いいこと」ばかり起きる人』『自分が高齢になるということ』(共に朝日新書)、『疎外感の精神病理』(集英社新書)など多数。

 それでも、やはり肉が苦手という人や、もうすでにうつ症状が出ていて肉を食べられないという人は、動物性タンパク質の豊富な牛乳や卵でも構いません。

 他にも、ホルモンを活性化させる食品はたくさんあります。

 以下に少し列記しますので、なるべく積極的に食べることをお勧めします。
 
・牡蠣:男性ホルモンを合成するために必要な亜鉛を豊富に含んでおり、ホルモンバランスを整えます。
 
・ナッツ類:強い抗酸化作用があり、老化防止に効果があります。またホルモン分泌の指令を出す脳の視床下部の働きを良くするビタミンEを豊富に含むため、ホルモンバランスを整える働きもあります。うなぎの蒲焼きやオイルサーディンなどもビタミンEが豊富です。
 
・ニンニク:男性ホルモンの分泌を増やす働きが認められていますが、この作用はタンパク質と一緒に摂ることでさらに促進されて分泌量が増加するため、肉類と一緒に食べると効果倍増です。
 
・アボカド:ビタミンE、マグネシウム、カリウム、葉酸などを含み、男性ホルモンと女性ホルモンを両方とも活性化して、ホルモンバランスを維持する効果が期待されています。
 
・玉ねぎ:男性ホルモンを増やす作用があります。
 
・大豆:良質の植物性タンパク質を摂取できるだけでなく、脳内の神経伝達物質の原料となるレシチンを豊富に含むため、脳の働きを活性化する効果があります。大豆にはポリフェノールの一種である大豆イソフラボンが多く含まれていますが、これは女性ホルモンとよく似た働きをするとされ、高齢女性には特にお勧めです。
 
・ザクロ:女性の更年期障害の改善や動脈硬化、骨粗しょう症の予防にも一定の効果が見られます。