台湾関係法に基づく米国政策の強力推進

 米国は、台湾関係法(TRA)に基づき、台湾に対し自走榴弾砲や航空機搭載型ミサイルの売却、そして防空ミサイルシステムの維持補修などを継続的に行っている。

 また、台湾軍の教育訓練を支援する目的で、小規模ではあるが米軍を派遣している。

 派遣されている米軍は、コアミッションとして「外国軍隊を組織し、支援し、訓練する」といった外国国内防衛(FID)の支援任務を有する特殊部隊である。

 さらに、米台両軍の高官の相互訪問を行うとともに、2024年4月には、両海軍が西太平洋で合同軍事演習を非公表で実施したことが明らかにされている。

 米台両軍は、中国が両軍の接触に反対していることから、情勢を慎重に見極めつつ協力を強化している。

 米国は、政府のみならず上下両議院もコンセンサスの下、台湾に対する支援を一層強化する方針を示している。

 最近の議会(第118回連邦議会)では、「21世紀貿易第1協定実施法」や「2024年インド太平洋安全保障補足歳出法」などの台湾関連法が制定された。

 また、米国と台湾の二重課税からの救済を求める「台湾差別禁止法」や、台湾に対する中国の脅威を終わらせるための規制機関に圧力をかける「台湾保護(PROTECT Taiwan)法」、台湾との接触に関する連邦政府機関への国務省のガイダンスに関する「台湾国際連帯法」などの法案が審議中である。

(米国議会調査局「台湾:背景と米国との関係」(2024年5月23日更新)の筆者訳)

 中国軍東部戦区は、民進党の頼清徳氏が総統に就任した5月20日から3日後、台湾周辺で2日間の軍事演習を行った。

 そして、同演習は、「台湾独立勢力の分離主義的行為に対する強力な懲罰であり、外部勢力による干渉と挑発に対する厳しい警告である」と述べ、頼政権を威嚇した。

 これを受け、早速、米連邦議会上下院の台湾関係委員会の委員長や台湾議連トップなどが台湾入りし、米国の台湾に対する支持を改めて伝えた。

 米国の台湾政策は、中国が台湾を攻撃した場合に米国が台湾を防衛するかどうかを明確にしない「戦略的曖昧さ」を基本としている。

 しかしながら、2021年1月に大統領に就任したジョー・バイデン氏は、それ以来、「米国が台湾を防衛する」と4回発言している。

 このように、米国は大統領をはじめとする政府、議会そして軍民が一体となってTRAが定める下記の政策を強力に推進している。

・米国は台湾が十分な自衛能力を維持できるようにするために必要な数量の防衛的な器材および役務を台湾に提供する。

・台湾の人々の安全や社会・経済システムを危険にさらすような武力行使やその他の形態の強制に対抗しうる米国の能力を維持する。