6.台湾包囲図公表は情報戦の色彩が強い

 ペロシ元米下院議長の訪台や、今回の頼清徳総統就任式直後に示した台湾を包囲するかのように示した演習海域の設定と図の公表には、裏の狙いがある。

 中国は、台湾が独立を主張すれば、今回のような公表で「台湾を包囲して海上封鎖を実施するぞ」と脅し、日本や台湾の人々に、それを映像化して脳裏に認知させようとする。

 これは、中国の「台湾がもともと主権国家であること、および独立を主張すること」をやめさせる情報戦なのである。

 だが実際は、台湾軍の防衛能力を踏まえて有事を考えると、ミサイルやロケットが飛び交うなかで、中国軍艦がその位置で遊弋し、中国軍機が通過することは、戦術的には不可能なのだ。

 中国軍のこれらの動きについて、日本のメディアが中国国営通信が流すものをそのまま解釈を加えずに、あるいは「中国軍、台湾封鎖誇示」などといった表現を使って流せば、中国の思う壺である。

 台湾や日本の人々が、台湾有事の際に台湾が図にあるような形で包囲されてしまうのではないかという、イメージを持たせることこそが中国の狙いだからだ。

 中国の情報戦(認知戦)に利用されることになる。

 メディアは、中国の情報戦に利用されないように注意しなければならない。そうしなければ、中国の情報戦の罠にかかることになる。