パレスチナ自治区ラファではイスラエルの軍事作戦で大きな被害が出ている(写真:ロイター/アフロ)

 イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ南部ラファへの侵攻で、多くの死傷者が出ています。ネタニヤフ政権の事実上の「ガザ占領政策」に対し、イスラエル国内でも各地で反戦デモが続き、政権支持率は低迷しています。その一方で、「ガザ占領政策」を支持する声も根強くあります。

 現在、極右政党と連立を組む第6次ネタニヤフ内閣には、首相よりも強硬な閣僚であるスモトリッチ財務相、ベングヴィル国家安全保障相らがいます。スモトリッチ財務相は極右政党の「宗教シオニズム」を、ベングヴィル安保相は「ユダヤの力」を率いています。2022年11月1日に行われた総選挙では、これらの極右政党が議席を倍増させました。いったい、イスラエルの中のどのような人たちが極右政党を支持しているのでしょうか。

(宇山 卓栄:著作家)

ヨルダン川西岸の若い世代は「入植者」との意識を持たず

 1967年の第3次中東戦争で、イスラエルがヨルダン川西岸を占領して以来、イスラエル人の入植が進み、今日では70万人以上のユダヤ人が住んでいます(同地域におけるパレスチナ人居住者は約300万人)。国際法の観点からは、イスラエル人の同地域への入植は違法とされています。

 同地域におけるイスラエル人は第2世代や第3世代に広がっており、彼らはここで生まれ育ち、ヨルダン川西岸地域を自分たちの生まれ故郷と見なしています。

 それにもかかわらず、パレスチナ人との争いが絶えず、なぜ、自分たちの故郷に、邪魔な異邦人がいるのかという不満を募らせています。若い世代は、自分たちが「入植者」であるという意識を持っておらず、その土地での生存権を当然のごとく主張し、原住者のパレスチナ人を完全駆逐することを目的としています。

 そして、SNSなどを効果的に活用し、全イスラエルに向けて、ユダヤ人の権利を訴えているのです。極右政党の集会に集う若い熱狂的な支持者はこのような形で、連帯しています。

 また、ユダヤ教独特の性規範から、宗教右派は子だくさんの家庭が多く、若い世代に、宗教右派の人口数が拡大するなど、イスラエル人口構成の大きな変化が生じていることも指摘されています。

 極右政党の一つである「宗教シオニズム」を率いるベザレル・スモトリッチ財務相はヨルダン川西岸の入植者に厚い支持層を持っています。ヨルダン川西岸出身(生まれはゴラン高原)で、イスラエルによる同地域の併合とユダヤ人の権利拡大を主張しています。

「宗教シオニズム」を率いるスモトリッチ財務相(写真:ロイター/アフロ)