「人」に投資するのは株だけ

 株式を買うということは、その企業の株主、つまり所有者になるということです。ただし多くの大企業では株主は直接経営を行わず、取締役会など経営陣に経営をゆだねます。株主が一斉に集まり、経営に対して意見を言えるのが「株主総会」というわけです。

 株式は自由に譲渡できるため株主が頻繁に変わることもあり得ます。場合によっては、目先のリターンしか見えない株主から難しい要求が来ることもあります。そうすると、本来その企業が持っている強みが損なわれたり、安定した経営が難しくなったりしてしまいます。

 逆に長期で株を保有している株主が多い企業は、じっくりと将来を見据えた経営ができるのです。

 企業への投資とは、企業の経営陣や従業員、つまり「人」への投資ということになります。彼らは努力をして、この世界に新しい技術や商品を生み出すことができる力を持っています。この世界に価値を生み出し、増幅することができるのです。もちろん逆に怠けたり、失敗したりもします。けれど私たちはじっくりとその企業、人を見たうえで投資します。

 株に投資することは、人と、社会とつながることなのです。

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【著者】
澤上 龍(さわかみ・りょう)
1975年千葉県生まれ。2000年5月にさわかみ投信株式会社に入社後、ファンドマネージャー、取締役などを経て2012年に離職。2010年に株式会社ソーシャルキャピタル・プロダクションを創業、2012年に関連会社の経営再建を実行し、2013年にさわかみ投信株式会社に復職、同年1月に代表取締役社長に就任。現在は、「長期投資とは未来づくりに参加すること」を信念に、その概念を世の中に根付かせるべく全国を奔走中。起業や経営の支援の傍らコラム執筆や講演活動も行う。

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