SNSとAIのイタチごっこ

 今回の事件、犯行は極めて悪質ですが、容疑者は急ピッチで検挙されています。

 その背景には捜査に導入された各種のデータ駆動システム、あまり使いたい言葉ではありませんが「AI」が活用されています。

 そもそも自動車のナンバープレート検索、いわゆる「Nシステム」からして数字を認識する人工知能、早くから実用化されているAIの一種です。

 また、携帯電話の過去ログ解析などは、基本すべて電子システム上で洗い出していきますから、データ駆動型の捜査といえるでしょう。

 さらに今回の「兵隊」検挙で活用されている「監視カメラ画像」解析、いまだ人海戦術の面も残っているようですが、画像認識AIの活用も拡大 している様子です。

 ですが、仮に「黒幕」がこうしたことを熟知した人物であれば、足跡を残さないよう入念に対策を立て、「トクリュウ」として芋づるになる人間関係と接触を断っている可能性が考えられます。

 SNSを使わない、携帯電話なども足がつかないようにする、人目に付く場所で一切接触しない・・・など「データ」が残っていなければ「黒幕」まで到達しない可能性がありうる。

 その場合、捜査は難航するでしょう。

 逆に、今現在捕まっている連中は、こうした検索網を認識しておらず、無防備なまま犯行に及んですぐに捕まっており、切られる前提のトカゲのしっぽ、哀れな状態にあります。

 こうした関連で思い出されるのは、1994年から95年にかけての「松本サリン事件」から「地下鉄サリン事件」にかけて、オウム真理教が取った犯罪行動です。

 彼らは、教団の犯罪を巡る裁判や捜査の手や目をかく乱するべく、紀藤弁護士襲撃の「事前実験」として松本で市中にサリンを散布。

 これを踏まえ、閉鎖空間ではもっと多大な被害が出せると考え、地下鉄での凶行に及びました。

 これは直前に発生した「阪神淡路大震災」の復興支援などで、捜査当局の員数が減ったことから、大きな騒ぎを起こせばオウムへの追及の手が減り逃れられるだろう・・・などと考えた、稚拙かつ悪質な動機から行われたものでありました。

 今報じられているのは「死体損壊事件」ですが、実際に被害者の生命を奪った本体の殺人事件にはいまだ到達していません。

「元大河ドラマ子役」といった情報は、この事件の黒幕、被害者をなきものにする動機を持つ人や、殺人事件の真犯人の姿を隠す、目くらましにしかならない可能性があり、捜査の進展を見守りたいと思います。