災害の多い九州に適した平屋住宅のメリット

 以上のようなさまざまな要因から平屋住宅が増え、今後も一段の増加が見込まれるわけだが、東京や大阪などの大都市部に住んでいる人には、平屋住宅が増えているといってもあまりピンとこないかもしれない。

 実際、リクルートSUUMOリサーチセンターが調べた「平屋の多い都道府県ランキング」(【図表2】参照)によれば、東京都の平屋住宅の割合は1.4%にとどまり、神奈川県は2.7%、大阪府3.0%などとなっていて、平屋住宅を見かけることは少ない。まして、新築の平屋住宅となると、なおさらだろう。


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 しかし、都道府県別にみると、新築住宅のうち半数以上が平屋住宅という県もある。

 その最たる例が九州の各県で、トップの宮崎県は55.8%、2位の鹿児島県は52.4%となっており、2014年に比べて平屋の割合がそれぞれ10ポイント以上増えている。そのほか、九州では熊本県、長崎県、大分県、佐賀県が平屋住宅の多い上位10県までに入っていて、九州は“平屋王国”の様相を呈している。

 なぜ、九州に平屋住宅が多いのかといえば、比較的地価の高い福岡県を除き、安価に広い土地が手に入るエリアが多いため、平屋住宅を建てやすいという点が挙げられる。

 第二の要因としては、地震の被害が多いエリアである点が挙げられる。2016年には震度7の巨大地震が二度襲った熊本で甚大な被害を出した。また、南西諸島では群発地震が発生することも多く、大規模地震を心配する人も多い。

 地震の揺れによって、建物が崩れるのを目の当たりにした人も多い。特に、熊本県益城町では震度7の最初の地震で傷んだ住まいが、二度目の地震で自らの重みに耐えかねるように崩れてしまった住宅が多かった。そのため、建物の重みが少ない平屋住宅のほうが安心という考え方が強まっているのだろう。

 九州は台風の通り道でもあり、2階建て、3階建てだと暴風の当たる面が多く、被害を受けやすいが、平屋住宅なら壁面が少ないので暴風に耐えやすいというメリットもある。

 それだけではない。鹿児島県には桜島があり、噴火による降灰被害が多いという問題もある。屋根に降り積もった灰を下ろしたり、雨どいの詰まりを清掃するためにも、平屋のほうが便利だ。