建設費用だけでなく、ランニングコストも抑制できる

 平屋住宅が増えている背景には、少人数世帯化のほかにも、いくつかの要因が考えられる。

 わが国では高齢化が急速に進んでおり、2階建て、3階建ての住まいでは階段の昇り降りが簡単ではないという高齢者や身体の不自由な方が増えている。

 戸建てにホームエレベーターを付けるという選択肢もあるが、そのためには200万円、300万円といった工事費がかかり、場所も取るので、狭い敷地が前提となる大都市部ではあまり現実的とはいえない。

 であれば、子どもたちが独立して夫婦だけになったときには、平屋で十分ということになる。年とってから住む場所を変えるのは、地域コミュニケーションを考えると簡単ではないし、ストレス、引きこもりの要因ともなる。そこで、いまの住まいを2階建てから平屋へ「減築」する人や1階建てに建て替える人が増えている。

 予算的には、ローコストを売り物にするビルダーであれば、2階建てでは2000万円前後かかるのが、平屋なら1000万円前後で済むことも多い。

 別掲にある図は、住宅メーカーのポラスグループが手がける平屋住宅の間取り例だが、リビングダイニングを囲んで、キッチン、バス、トイレ、ベッドルームがひとつの動線上にまとまっている。子どもたちが独立後のシニア世帯だけではなく、何かと忙しいディンクスなどにとっても好都合な設計となっている。

ポラスの平屋住宅の間取り例

 平屋住宅が増えている要因のひとつとして、当初のイニシャルコストを抑えることができると同時に、建設後、購入後のランニングコストを抑制できるというメリットもある。

 ワンフロアなので、光熱費を抑えることができ、短時間で住宅内を温めたり、冷やしたりできるのは魅力だ。特に、このところは電気・ガス代の高騰が目立っているだけに、ますます平屋住宅が増える要因となりそうだ。

 たとえば、前出のポラスグループが、埼玉県草加市で開発している建売住宅「ときわの環(わ)草加松原」は全25棟で、全棟ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)となっており、光熱費負担を抑制できるうえ、25棟のうち7棟は階段のないバリアフリーデザインの平屋住宅となっている。

ポラスの「ときわの環(わ)草加松原」平屋住宅