だれが頼んだわけでもないのに、また余計なアンケートをとって発表したものである。そしてそこから、大げさな結論を導き、不要な提言をしている。
日本人のこの消極性は、100歳まで生きることに関して、日本人が「(周りに)迷惑をかけたくない」「大変そうに見える」などネガティブな面のみに注目しているからだ、という(いいではないか)。
それに比べて海外5カ国は「不安が増える」といったリスク面だけでなく、「幸せそうに見える」などポジティブな側面にも注目しているところに差が出ているのだ、という(100歳が「幸せそうに見える」わけないじゃないか)。
だから、と100年生活者研究所の担当者は、「日本でもポジティブな側面への社会的な注目度を高めていくことが課題」だというのである(そんな「課題」はない)。
極めつきは研究所長の大高香世氏の言葉である。彼女は、「人生が伸びることは、不安がどんどん増えるリスクだと考える人が多いことが調査でわかった。私たちは逆転の発想で、年を重ねることを楽しみだと思う人をどんどん増やしていきたい」と話す。大きなお世話である。
「これからは人生100年時代だ」といって、老後もバラ色だと宣伝して騒いでいるのは、それをキーワードにして金儲けをしたい企業と、なにかをやっているフリをしたいだけの政府である(政府は、2017年に「人生100年時代構想会議」を何回か開いただけで、早々に撤退した)。
わたしは、よくぞ最下位になってくれた、と思う。
雑な質問に無意味な結果
いまでこそ人生は1回かぎり、楽しまなきゃ損だ、と考える老若男女が増えてきたが、もともとが生真面目な日本人である。
家康の遺訓とされる「人の一生は重荷を負て遠き道を行くが如し」に、いまだに共感する日本人は多い。やみくもに長寿は望まない、人に迷惑をかけてまで生きるつもりはない、コロリと死にたい、という日本人の伝統的人生観は悪くないのである。
100年生活者研究所のアンケートでは、幸福度についても日本は最下位だという。10点満点で日本は5.9点、一番は中国の7.4点、ついでフィンランド6.8点、ドイツは6.6点、アメリカ6.5%、韓国は6.2%である。
しかしこれまた質問が、恐ろしいほどに稚拙である。
「あなたは全体として、どの程度幸せですか。『とても不幸せ』を0点、『とても幸せ』を10点とすると、何点くらいになると思いますか」というのである。
しかしよくもこんな雑な質問を考えたものである。「全体として」って、なんだ? それにどちらにしても、大した差ではない。
ところが研究所はこの無意味な結果をみて、「日本はドイツに2023年のGDPで抜かれて4位となりましたが、経済指標だけでなく幸福度でもドイツに及ばないことがわかりました」と腐しているのである。ばかばかしい。