シナリオ(2)米台対処・国際社会支援

 中国による台湾離島への侵攻に対して米国と国際社会が台湾を支援し、中国からの侵攻に対処する一方、日本は、わが国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」と認定できないとの観点から、静観する可能性を想定したのが「米台対処・国際社会支援シナリオ」だ。

米国と国際社会が支援する「米台対処・国際社会支援」シナリオ
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 米国が軍事介入の姿勢を見せた場合、中国の軍事行動は威力偵察で終了すると考えられる。他方、米国が軍事介入せず、台湾への軍事支援や中国への経済制裁のみにとどまる場合、台湾本島への侵攻に移行する可能性がある。

 米中の軍事衝突に発展した場合、中国が設定した第一列島線(九州を起点に沖縄、台湾、フィリピンに至る防衛ライン)から第二列島線(伊豆諸島を起点に小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至る防衛ライン)の西側まで影響が及ぶと思われる。日本の静観スタンスは国際社会から批判を浴び、特に米国から強い圧力を受けるだろう。

中国からレアメタル・レアアースなどの供給停止

 中国の経済的な影響は大きい。米中直接対決のリスクが高まるため、中国への経済制裁が強化される。外貨準備が凍結された場合はもちろんだが、凍結されていなくても資金の目詰まりが懸念される。

 日本にとっては、中国(香港含む)との貿易遮断が生じ、中国からのレアメタル・レアアースなどの重要資源の供給がストップするなどの影響が想定される。中国本土で資産を接収される可能性なども生じるだろう。GDPは1.5%程度の減少が想定される。

 米中が直接対決する「米中本格対決シナリオ」を含む残る2つのシナリオは、次稿「《台湾有事、4つのシナリオを詳解》米中本格対決ならGDP15%減も コロナ危機比3倍の大打撃が日本経済に」で詳解する。

【後編を読む】
◎《台湾有事、4つのシナリオを詳解》米中本格対決ならGDP15%減も コロナ危機比3倍の大打撃が日本経済に