小池氏は、政治家になって27年経つが、この間、卒業証明書や卒業証書を見せたのは、「週刊ポスト」やフジテレビなど、ごく限られたメディアに対してのみで、都議会での公開要請にも応じていない(しかも「週刊ポスト」(1993年4月9日号)の画像はごく小さなもので、文字はまったく判読不能)。また成績証明書は公開していない。
不鮮明な印影
小池氏が卒業関係書類を、明瞭な形で一般に公開していないため、それらが本物かどうかは、唯一文字が判読できるフジテレビのスクリーンショットで検討するしかない(2016年6月30日放送の「とくダネ!」)。
拡大画像表示
この検討にあたって筆者は、現地で会ったカイロ大学の卒業生やインターネット・サイトから20通ほどの卒業証明書を集め、小池氏のものと比較してみた。それらは1973年から2015年の間に、文学部、工学部、政経学部、商学部、医学部、薬学部、法学部などを卒業した人々のものである。
カイロ大学の卒業証明書は、学部や発行年度によって署名者、スタンプ、用紙の形が少しずつ違っている。署名者は、1つの卒業証明書に3~5人で、ムハッタス(specialist)、ムサッジル(registrar)、ムラーキブ(controller)、ムラージウ(checker)などがサインし、その下に、ムディール・アーンム・アッ・シュウーニ・タアリーミーヤ(general director for educational matters)やアミード・ル・クッリーヤ(学部長)などのサインがあるものが多い。また収入印紙が貼られ、大学の総合管理部(アル・イダーラト・ル・アーンマ)や学部のスタンプが、収入印紙の割り印を含め、1~5カ所に押されている。用紙は正方形に近いものもあるが、縦長の長方形が多い。
拡大画像表示
拡大画像表示
小池氏の卒業証明書はスクリーンショットで見る限り、証明書として通用しない代物である。なぜなら、最重要要件である大学のスタンプの印影がいずれも判読不明だからだ。
日本の銀行でも払い戻し請求書の印影が不鮮明だと、お金を下ろすことができないのと同じである。小池氏の卒業証明書には、3つのスタンプが押してあるが、右下の1つだけが、かろうじて鷲のマークがあるように見え、残り2つは何のスタンプか判然としない。筆者が集めた他の20通ほどの卒業証明書はいずれもスタンプが鮮明で、鷲のマークも、その周囲に書いてある学部名や大学の総合管理部というアラビア語の文字も鮮明に読める。
筆者はカイロ大学文学部の教授や日本の援助機関に管理職として勤務するカイロ大学工学部出身者に小池氏の卒業証明書を見せたが「これでは卒業証明書として通用しない」と言われた。前述の“不正卒業証書”作成業者を潜入取材したダリヤ・シェブル氏は「当時は優れた偽造技術を持った業者はいなかったと思うので、小池氏の卒業証明書は大学内部の人間が関与して作成した物だろう」とコメントした。