- 身体の中で最も広い面積を持つ「背中」だが、これまであまり注目されてこなかった。
- だが、小説家で鍼灸マッサージ師の松波太郎氏は、うつ伏せの状態で施術ベッドに横になっている患者の背中が健康状態を雄弁に語っていることに気がついた。
- 患者とのやり取りから背中が語る「からだの言葉」を東洋医学的に読み解く。後編は、背骨が左右にS字に曲がる「側弯症」の若い女性がコリをほぐしにやって来た。彼女の声も、何だかちょっと、ふらついてうるようで…
(*)本稿は『背中は語っている<からだのことば>を解きほぐす東洋医学』(松波太郎著、晶文社)の一部を抜粋・再編集したものです。
◎前編:【鍼灸師が読み解く「背中」(上)】真ん中が黒ずんでいる人は要注意!かゆくて掻きむしり睡眠不足か、それとも…
背骨というのはそもそもが曲がっています。“生理的弯曲(せりいてきわんきょく)”と医学的に呼ばれるものがそうで、頚椎七個はやや前弯、胸椎十二個はやや後弯、腰椎五個はやや前弯というように、ゆるやかなS字を描いているのが人体においては当たり前の生理なのですが、これはあくまで「前〜後」の話です。
【患者3】背骨が左右にS字に曲がっている
「は〜い」
(編集部注:……で始まる「」は松波氏の発言、それ以外は患者。以下同じ)
歩行の際の衝撃を吸収するのにあずかって助けとなっているのが、この前〜後のS字であり、まっすぐになってしまっている背骨よりも1/10ほどの衝撃ですんでいるのだそうですが
「え〜え」
右〜左というS字はもちろん生理ではありません。
「そ〜なんです」
左〜右でももちろん同じことです……歩行の際の衝撃だけでは済まないS字になるでしょう。
先天性の場合には、背骨の椎骨に何かしらの異常形成があることがまずは考えられ、後天性の場合には、思春期のとくに女性に多いことから身長の伸びにかぎらない種々の急激な発育も原因として考えられますが
「はじめて〜言われて」
声そのものもどこか線が細く、右〜左に少しふらついている印象をうけています。