お灸であえてヤケドさせ、コリをゆるめる

 次に脊柱管狭窄症の所で紹介した背骨の両隣の脊柱起立筋の緊張を、ハリでゆるめて

「……痛かったらおっしゃって下さい」

 数回経過を見て、身体全体の体調・体力の底上げも実感したところで

「……熱いかもしれませんが、次にお灸をやってみましょうか?」という断りを患者さんに入れてから、お灸も施していくことにします。「少しヤケドになる場所もあるかもしれませんが、ヤケドを起こすことで白血球が集まり、白血球の中のマクロファージが筋肉にたまった疲労物質を食べてくれるので、コリの方もゆるんで……」

 お灸におけるヤケドの効果も念のためお伝えした上で――しかしなるべく痕に残らないように心がけながら

「ちょっと熱いかも〜」

 ヤケドになる/ならないの皮膚状態にも個人差・個体差が相当あるのですが、発赤する程度で済むように心がけながら

「あ〜……これはだいじょーぶ」 

 脊柱起立筋上にモグサを並べていきます。

画像:『背中は語っている<からだのことば>を解きほぐす東洋医学』(松波太郎著、晶文社)より

 とくに弯曲の強い起立筋の上に並べて、背骨を挟み込みます。

「……“だいじょ〜ぶ”じゃなくて、“だいじょーぶ”になってきましたね」

 上から順に線香で点火していきます。

「なに言ってんの、先生……でも、あー、ヨモギのにおい、いいですねー」

 という嗅覚の感想をのべる余裕を見せていた患者さんですが、すぐに温覚の方に切り替わっていきます。