ロシアの砲撃が続く中、ウクライナで市民とともに生活し、支援活動を続けている日本人ボランティアがいる。その功績が認められ「ウクライナのレジェンド賞」を受賞した。物資の配布、無料食堂の開設に続き、新たな支援活動に乗り出そうとしている。満足な教育を受けられない子供たちに本を届ける移動図書館だ。2022年4月から2年間にわたって現地で活動する土子文則さんの姿と肉声を写真とともに紹介する。
(小峯 弘四郎:カメラマン)
◎第1回 【現地写真ルポ】猫も必死に救出、ダム破壊で大洪水のウクライナ・ヘルソン州
◎第2回 1ブロック先でミサイル着弾!日本人カメラマンが見たウクライナ砲撃の現場
◎第3回 【現地写真ルポ】ウクライナ・ヘルソン、家が被弾しても生きていく街と住民
◎第4回 【写真ルポ】解放後も残るロシア占領の痕跡、ウクライナ・ヘルソン南西部の村
>>これまでの連載で掲載した主な写真はこちらから(全50枚、※血痕が写っている写真も含まれます)
シュミハリ首相がスピーチで紹介した日本人
2024年2月19日、都内で日・ウクライナ経済復興推進会議が開催された。ウクライナからはシュミハリ首相が来日し、会議のスピーチで、ある一人の日本人を紹介した。
「…希望の光が見えています。希望の光を与えているのは人です。ウクライナで伝説的な英雄になった日本人のボランティア、フミノリ・ツチコがハルキウで無料のカフェを開いて、戦争中毎日のようにロシアの砲撃を受けている市民に『微笑んで欲しい』とおっしゃって無料で食事を提供しています。奇跡だらけのハルキウでこの言葉に特別な意味があります。これが人情と不屈の精神を表している言葉です…」
スピーチで紹介されたのは、土子文則さん(75歳)、2023年8月23日、ウクライナの発展に貢献した人に贈られる「ウクライナのレジェンド賞」を受賞した日本人だ。
地下鉄構内で避難市民とともに生活
2022年2月24日にロシアと戦争が始まると、4月にウクライナ入りしてボランティア活動を始めた。6月から北東部ハルキウに移り、地下鉄構内に避難している人々と約半年間生活をともにして生活を支え続けた。
その後も現地に残り、日本からの寄付やクラウドファンディングなどで集めた資金で、定期的に食料や生活必需品を配布し、2023年4月に子供や低所得者向けの無料食堂「FuMi Caffe」をオープンした。一連の支援が現地で知れ渡り、「ウクライナのレジェンド賞」を受けることになった。