女性は無精ヒゲが好き?
装飾理論を支持する新たな近年の研究もある。とりわけ女性は無精ヒゲを好むことが発見された。これは1990年にマイケル・カニンガムが率いる心理学者のチームが、男性の顔の魅力を定めようとしたときに、偶然の発見として報告した。
このチームは26の要因を明らかにした。そこには、目、鼻、口の高さや幅など18の測定値と、髪や服装の違いなどが含まれる。ジョージア、イリノイ、そしてケンタッキーの女子学生が、多くの男性の写真をみて、魅力的かどうかで点数をつけた。魅力的な顔の最もよい指標は大きな目であり、それは女性の顔についての男性の評価でも同じだった。
男性の顔では、突き出たあごとほお骨が、外見のよさと関係していた。この研究の目的は「複合的適応」という自分たちの仮説を調べることだった。つまり、女性は、目が大きいという「新生児的」(赤ん坊のような)顔立ちと、しっかりしたあごという「成熟した」男性的な顔立ちの、どちらにも惹かれるというのである。
しかしながら、あごヒゲと口ヒゲは「複合的適応」には含まれないようである。というのも、ここでもまた、あまり魅力的ではないと思われたからである。女性が好きな「新生児的な」特質をヒゲが損なうからだと、この研究者は推測した。
女性がヒゲに魅力を感じないという見方は新しいものではないが、その調査で研究者が驚いたのは、無精ヒゲと魅力との間に正の相関関係がみられたことである。この研究では、あごヒゲと口ヒゲの顔は慎重に除かれていたが、いくつかの写真の顔はすべすべに剃られたようにはみえなかった。
女性の反応が示したのは、(剃られてはいるけれども)ヒゲがはっきりとみえる顔の方を好むという驚きの結果だった。実際のヒゲは新生児的な好ましい顔の特質を覆い隠すけれども、ヒゲを生やせる可能性は「成熟した」好ましい容貌だということを意味する。そのようにこの研究は解釈した。
つまり、無精ヒゲは、男性的だけれども男性的すぎない、という女性が求めるバランスの一種なのである。この結果は本当に思わぬ発見だった。無精ヒゲは、誰もが求めていなかったときに、自分から存在を示したのである。