ヒゲと攻撃性の関連

 ヒゲがある種の脅しのしるしかもしれないということは、最近の2012年におこなわれた研究でさらに確認された。そこでは男性の絵に対してニュージーランド人とサモア人先住民が示す反応を調査した。

 男性も女性も、同じ男性にヒゲがあると、年上にみえ、かつ、攻撃的で地位は高くみえるが、魅力的ではないと評価した。研究者はまた、しかめっ面で怒って歯をむいた男性の写真を示したところ、どちらの文化の人も、ヒゲのない男性よりもヒゲのある男性の方に脅威を感じた。これは、ヒゲが実際に、男性の競争相手を怖がらせる脅しの装置である証拠だと、著者は結論づけた。

 これらの結果は武器理論を支えるものであるけれども、なぜ被験者がヒゲのある男性の方が攻撃的だと考えたのかは、まったく明らかでない。いくつかの実験によれば、攻撃性と反社会的行動が連想されるのは、ヒゲがあごを大きくみせる効果によるというよりも、ヒゲがもつ文化的意味の結果でありうる。

 結局のところ、ここ数十年の間、ヒゲは、攻撃したりかみついたりする表象よりも、明らかに政治的な反発と反社会的行動の表象だった。怖がらせるような連想は、身体的な優位よりも、ドラッグの文化や急進主義によるものなのかもしれない。武器理論の側が最も強く望むのは、ヒゲと攻撃性の連想が文化的なステレオタイプではなくて、実際に原始的な脅しのしるしを反映していることである。