もう一人、特徴的な描かれ方をするのが空蟬だ。
受領の後妻・空蟬との甘美な恋は、『源氏物語』では、「帚木」(第2帖)「空蟬」(第3帖)で語られ、さらに「関屋」(第16帖)にはその後日譚も登場する。
一方、『あさきゆめみし』では、「其の十八」に回想という形でまとめられているのだ。
本来であれば、少女漫画の主人公にはなりえない、いや、なってはいけない人物であった光源氏。しかし、『あさきゆめみし』では、愛の求道者とし、さらには、『源氏物語』には語られなかった「出会い」を加筆したり、女君の心情を丁寧に表現するなど、さまざまな工夫によって、読者の共感を得られる人物像を作り上げた。
大和和紀の創造力と包容力によって、光源氏は“少女漫画のヒーロー”となったのだ。
※お知らせ
年表、原画コメントなど『太陽の地図帖』が展示協力した展示会が、2024年3月9日~24日に札幌で開かれます。
『あさきゆめみし』×『日出処の天子』展 -大和和紀・山岸凉子 札幌同期二人展-