(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)
中国における不動産バブル崩壊が誰の目にも明らかになった。ただ、そのバブルがどの程度のものなのか、崩壊して何が起こるのか、もう一つ明確ではない。その最大の原因は、中国政府が発表するデータが信用できないからだ。折に触れて内外のマスコミが報じるデータからも、全体像を掴むことはできない。ここではフェルミ推定(実際に調査することが難しい数量を論理的な推論によって概算すること)の手法を借りて、中国のバブル崩壊とはなんなのか考えてみたい。
中国にある住宅の総数は?
中国の人口は14億人、実際にはこれより少ないと言われるが、ここでは概算を行うのでこの数字を採用する。14億人は都市戸籍を持つ6億人と、農民戸籍の8億人に明確に分かれている。バブルに踊ったのは都市戸籍を持つ6億人だけだ。
都市部の平均世帯人数は3人だから、都市では2億戸の住宅に人が住んでいる。また農村の平均世帯人数は4人とされるから、2億戸の住宅に人が住んでいる。中国で人が住んでいる住宅の総数は4億戸ということになる。
農民戸籍である8億人の中で2億人ほどが都市に住んでいる。彼らは流動人口であり「農民工」と呼ばれており、その多くは雇用者側が用意した寮に住んでいる。不景気になれば農村に帰る。農村の家は広いので、息子や娘が戻ってきても住む場所には困らない。