同じように不安定なRさんの本業

 報酬以外も、リスクがある。

「一度、ドラッグストアから受け取ったポカリスエットと解熱剤を届ける発注がありました。インターホンを押すと寝間着姿の具合の悪そうな人が出てきましたが、実はコロナ患者だったかもしれません。幸い、これまでにコロナにかかったことはないですが……」

 個人事業主なので、装備は自己負担だ。

「年間5000~6000kmを走るため、自転車のタイヤやチューブ、ブレーキパッドの交換が1年に1回は必要。保険にも加入しなければいけない。年間で3~4万円の経費がかかります」

 Rさんは平日の本業も非正規労働者だ。派遣会社から大手企業などに派遣される「ITヘルプデスク」をしている。パソコンの初期設定やシステム回りなどをサポートする仕事だという。

「派遣社員になって10年以上経ちます。お陰様で仕事が途切れたことはありませんが、半年に1回くらい派遣先が変わる。ボーナスはなく、年収は400万円弱ですね」

 かつては正社員として、広報やマーケティングの仕事をしていた。

「新卒で入ったのは企業のPRなどを行う広報専門の会社。キャリアアップを目指して同じような職種で2回転職しましたが、徐々に勤め先の条件は悪くなっていきました」

 正社員として最後に勤めた会社は、2008年のリーマンショックでリストラに遭った。35年の住宅ローンを組んだ直後のことだ。退職金と給料の3カ月分が支給されたが、その金額は200万円にも満たなかったという。

 失業後、Rさんはハローワークを通じてIT系の職業訓練を受け、現在に至っている。

「本当は広報やマーケティングの仕事をやっていきたかった。300~400社くらいに履歴書を出したけれど、全部ダメでした。すでに40歳くらいでしたし、リーマン後はそういう求人がほとんどなくて」

 妻と二人暮らし、子どもはいない。今のRさんには、どこか吹っ切れた感じがある。

「現在の年収は正社員時代の半分くらい。もう正社員になることは諦めています。住宅ローンも支払えるし、贅沢をしなければ暮らせないことはない。正社員の頃は、好きなフィギュアを大人買いしたり、タクシーで帰ったり、けっこう贅沢していましたから」