サッカー日本代表はカタールで開催中のAFCアジアカップ2023で優勝候補の筆頭に挙げられながら、準々決勝でイランに1-2で敗れた。PKを招いた試合後半はイランに主導権を握られ、日本代表らしいアグレッシブな攻撃が影を潜めた。敗因の1つに性加害報道で代表を離脱した伊東純也(スタッド・ランス)を巡る騒動の影響を指摘する声もある。欧州サッカーを半世紀近くウオッチしてきた専門家は「サッカー界でも近年性加害事件への対応が厳格化しており、伊東も当面厳しい状況に置かれるのではないか」と懸念する。同様の容疑で告訴された海外の大物プレーヤーたちの顛末を振り返る。
(森田 聡子:フリーライター・編集者)
ワールドベストイレブン8回のレジェンドも
欧州リーグで活躍するトップスターにも、女性の告発を受け窮地に立たされた選手は少なくない。
2023年に世間を賑わせたのは、ブラジル代表の攻撃的な右サイドバック(SB)で、バルセロナやユヴェントス、パリ・サンジェルマンなど欧州リーグのトップチームで活躍したダニエウ・アウヴェスだ。
40歳のアウヴェスは、サッカー選手の投票によるFIFPro(国際プロサッカー選手会)ワールドベストイレブンにも8回選出されたサッカー界のレジェンドの一人。21年に開催された東京五輪にはブラジル代表のオーバーエイジ枠で出場し、史上5カ国目となる連覇に貢献している。
アウヴェスはメキシコ1部リーグのプーマスUNAMに所属していた23年1月、その前年12月にバルセロナの高級ナイトクラブの化粧室で20代の女性に性的暴行を加えた疑いでバルセロナ当局に逮捕された。UNAMは同月、直ちにアウヴェスとの契約解除を発表した。
事前の取り調べで「女性とは面識がない」としらを切るなど供述内容を二転三転させたことも心証を悪くした。後に「妻に不貞を隠したかったから」と弁明したが、その妻からも離婚を宣告されてしまう。
女性との性行為は合意の上だと主張し勾留中に何度か保釈を請求したが、ブラジルに逃亡する恐れがあるという理由で認められなかった。8月にはスペインの判事によって正式に起訴される。
スペインでは前年秋に「同意がない性行為は全て性犯罪として罰することができる」といった性犯罪への対応を強化した法改正が行われていたこともあり、23年11月に懲役9年が求刑された。