奪還した町に残された虐殺の痕跡、人々の心に刻み込まれるロシアへの憎悪
前線近くには「解放された地域」がひろがっている。侵攻してきたロシア軍に一時占拠されたのちに、ウクライナ軍が反攻によって奪還した町や村である。

ウクライナ北東部ハルキウ州のイジュームは、交通結節点として戦略的な要衝であり、ロシアによる侵攻直後から争奪戦が展開された。半年近くロシア軍の支配下に置かれたが、激戦の末、2022年9月10日にウクライナ軍がイジュームを奪還。その数日後、林の中に集団墓地が見つかった。

掘り返して出てきた遺体は449柱。うち17柱はウクライナの兵士で、まとめて一つの穴に埋められ、その他は6歳の子どもをはじめすべて民間人で、一柱ごとに粗末な木の十字架とともに埋葬されていた。
後ろ手に縛られていたり、拷問跡のある遺体も見つかり、ハルキウ州知事のオレグ・シネグボウ氏は「99%の遺体に暴力が加えられた痕跡がある」と語る。ロシア軍が民間人を虐殺したのはここだけではない。
より早い段階で住民虐殺が判明したのが、緒戦でロシア軍が占拠したブチャなど首都キーウ近郊の町だった。22年4月2日、ウクライナ軍がロシア軍を押し返してブチャの町に入ると、数多くの遺体が遺されていた。拷問やレイプ、暴行を受けたとみられる遺体も多く、子どもたちや高齢者を含む無差別殺人が行われたことが判明する。