経済産業省が30日に発表した2月の鉱工業生産速報で、生産指数は前月比▲9.4%。5カ月連続の低下だが、マイナス幅は前月の▲10.2%を下回った。また、製造工業生産予測指数は、3月が前月比+2.9%、4月が同+3.1%と、ともにプラスの数字。過剰在庫をなくすための急激な減産がそろそろ一巡しつつあるのではないかという見方を強める数字の並びである。

 3月第4週に発表された日米経済指標を見ると、米国では強い数字のほうが圧倒的に多かった。そうしたこともあって、市場では景気底入れ観測が断続的に浮上しやすい、ないしは景気指標の悪い部分よりも明るい兆しと受け取ることのできる部分に対する反応が出やすいステージに、いったん移行しつつあるようにもうかがわれる。

 しかし、筆者がこれまで何度も述べてきたように、米過剰消費崩壊という大きな地殻変動が根底にある今回の景気後退については、回復パターンがV字型になることは期待すべくもない(米2月の個人貯蓄率は4.2%で、過剰消費膨張前の8%前後は遠い)。

 生産ひいては景気がボトムをつける(最悪期を通過する)としても、そこからの上向きの角度は緩やかで、力強さには欠けており、供給サイドのダウンサイジングが強まり個人消費悪化が加速するといったショックが加わるとたちまち失速してしまう危険性をはらんだ、不安定な超低空飛行にならざるを得ない。

 そもそもの話として、今回の鉱工業生産の数字についても、生産予測指数の並び通りには生産が回復していきそうにないことを示唆する数字が見られる。最も目立つのは、生産に先行する在庫率が、季節調整済指数(2005年=100)で158.2に上昇しており、まだピークをつけて低下に向かう兆しがないことである。在庫は前月比▲4.2%で、2カ月連続で減少しているが、出荷の落ち込みが止まっておらず(前月比▲6.8%)、出荷と在庫のバランスは悪化を続けている。

 また、生産面で波及が大きい自動車を中心とする輸送機械工業の動きを見ると、2月は、生産が前月比▲23.2%、出荷が同▲12.8%、在庫が同▲20.3%、在庫率が同▲3.1%(季節調整済指数は160.1で、4カ月ぶりの低下)となっている。急激な減産が奏功し、在庫が3カ月ぶりに減少したものの、出荷の落ち込みは止まっておらず、在庫率の低下幅も小さい。

 輸送機械工業について生産予測指数を見ると、3月は前月比+4.5%、4月は同+7.0%となっており、2月水準からの増産が計画されている。しかし、予測指数の2月実現率は▲0.9%、(翌月である)3月の予測修正率は▲2.4%という大きなマイナスになっている点が重要と考える。販売(出荷)がそろそろ下げ止まることを期待しつつ、いわば打診的に、増産に転じる計画を組んでみるものの、輸出・国内ともに販売の極度の不振が続いていることで、当初生産計画を段階的に下方修正している姿がうかがえる。