お気に入りはシャンソン、タンゴの外国曲

 私が小学生だった昭和30年代後半(最初の東京五輪開催前の時期)、地元の遊び場だった洗足池からほど近いところに淡谷のり子の豪邸があり、その人物をよく知りもしないのに有名人らしいということだけで、少年探偵団を気取って野球仲間と一緒に探し歩いたことがありました。

 近くにエノケンこと、榎本健一の自宅もあったようですが、榎本邸はわからず、淡谷のり子の豪邸を囲む長い塀(コンクリートだったかな)の印象だけが残っています。

『ブギウギ』に登場したことで淡谷人気が復活、今後も書籍やCDなど関連商品が復刻されたりしていくことでしょうが、すでに発売済みの『淡谷のり子 私の好きな歌 コロムビア編』という26曲収録のCDが手元にあります。

 その収録曲を見てみると、お気に入りのシャンソン以外に、多数のタンゴ、そのほかボレロ、ルンバなどのラテン音楽、映画音楽などさまざまな分野の曲が選ばれており、選曲されたラインナップの広さからも淡谷の実力の一端を垣間見ることができます。歌唱力が伴っているのは言うまでもありません。

 若かりし頃の淡谷がオペラ歌手をめざし、懸命に「クラシックの声楽の基礎」を学んだことが、その後の歌手人生においてジャンルを問わず歌いこなせる原動力になったことを立証しているようです。