「ファミカセ」を海外に売るせどりおじさん

 せどりを2年前から副業にしているEさん(56)にも話を聞いた。Eさんの本業は、中規模IT企業のシステムエンジニア、年収は800万円。

「15年ほど前に海外の中古レコードを輸入し、ヤフオクで売る副業をやっていたことがあります。今は円安ですから、今度は輸出をやってみようかと」

 おじさんセドラーはもともとヤフオクユーザーで、今は戦場をアマゾンやイーベイに移した人が多いようだ。

 Eさんの場合、商品はファミコンのカセットに限定している。

「僕らが子供のころに遊んだファミリーコンピューターは、海外にマニアがいるんです。買ってくれるのはアメリカ人、イギリス人、メキシコ人が多い」

 希少性があり、マニアのいる商品を見つけたセドラーは強い。Eさんはファミカセがメルカリなどで大量に投げ売りされているのを狙う。実家の大掃除などで、清掃業者から出されることがあるからだ。

 Eさんは月に1~2回、こうしたファミカセを100本3000円くらいでまとめ買いするという。

「100本も買うと、半分以上は値段がつかないものばかり。ただその中にある人気のカセットは1万~2万円で売れる。トータルでは10倍の3万~4万円くらいになりますから、いい商売です」

 どんなファミカセに高値がつくのか。

「スーパーファミコンになる前の『マリオブラザーズ』や『ロックマン』。これ以上は言えません」

 経費を差し引いた利益は月4万円くらい。税金のこともあるので、年間の利益が30万円以上にならないようにしているという。

 しかし、Eさんもせどりの継続に、それほど前向きではない。

「少しの知識で稼げるといえば稼げる。ただ、実際にファミカセを本体に接続してゲームができるか試したり、商品を梱包したりと、地味な作業が面倒です。家族は手伝わないのかって? 妻や大学生の息子は、僕がせどりをやっていること自体知りません」

 Eさんは毎週末に100本ものファミカセで遊ぶという「仕事」が、だんだん辛くなっているようだった。