「ショウヘイは誰も歩んだことのない道を行く」

 このような支払い方式は、大谷が自分から切り出したということである。ネズ・バレロ代理人に対し、「僕の年俸を全部繰り越したら、チームは勝ちやすくなるの?」と持ち掛けたのだという。

 バレロ氏はこういっている。「スポーツ界で彼ほどのレベルに達した選手で、チームの競争力維持のために、『僕はお金なんて必要じゃない』と本気で言える選手が、誰か他にいるかい? あり得ないよ」(始まりは大谷翔平の提案 バレロ代理人が米誌に明かした“994億円後払い”契約誕生の舞台裏「僕はお金なんて必要じゃないと」、CoCoKARAnext、2023/12/12)

大谷と話す代理人のネズ・バレロ氏(2022年8月、写真:共同通信社)大谷と話す代理人のネズ・バレロ氏(2022年8月、写真:共同通信社)

 大谷が「僕はお金なんて必要じゃない」と「本気で」いったとは思えない。そういういい方はしないだろう。しかし金は二の次だ、といったりすることなら十分ありうる。大谷は何事においても、お金を人生で一番の価値と考えるような人間ではない。

 2017年にエンゼルスと契約したとき、もう2年待てば200億円の契約になったのに、そんなことは問題じゃないと、メジャー最低保障額の54万5000ドル(約6000万円)で契約をした。世間はあきれたが、大谷はそういう人間である。

 バレロ氏は「もう7年も一緒にいるが、いまや彼がすることには驚かなくなった。ショウヘイはいつだって誰も歩んだことのない道を行く人間だ」といっている。「驚かなくなった」といいながら、心底驚いているのである。

 なにをするにしても、大谷翔平の振る舞いは非の打ち所がない(ただしWBCの決勝戦で、最後の打者トラウトを打ち取ったときに、興奮しすぎたのだろうが、グローブを放り投げたことは見苦しかった。イチローは認めないだろう)。

米球界に渡って5年になった筒香

 そんな大谷翔平の華やかな話題の陰で、小さなニュースが報じられた。

 ひとり我が道を行く筒香嘉智(つつごう よしとも)選手のことである(ちなみに、筒香はわたしの兄弟の間では「日本兵」の愛称で呼ばれている。もちろん悪気はない)。

 今年、米球界5年目になる筒香は2019年、タンパベイ・レイズと2年1200万ドル(約17億円)で契約した。翌年開幕を迎えたが、しかし年間を通して打率は2割に届かず、不振だった。

筒香選手の写真、米球界での5年間と現在

レイズ入団会見を行う筒香嘉智(2019年12月17日、写真:アフロ)レイズ入団会見を行う筒香嘉智(2019年12月17日、写真:アフロ)

 2021年ドジャースに移籍し、期待されたが故障。同年、ピッツバーグ・パイレーツに移籍。まずまずの成績を残したが、2022年負傷者リストに入り、自由契約になった。