生成AIのエンジンにあたるものがLLM(写真:Jaap Arriens/NurPhoto/共同通信イメージズ)
  • 新語・流行語大賞でトップ10に選ばれるなど、この1年で生成AIは一般的な存在になった。
  • だが、さまざまなパーツで構成されている自動車のように、生成AIにもエンジンがあり、シートベルトがあり、エアバッグがある。
  • ChatGPTをはじめとした生成AIを使いこなすためには、それぞれの構成要素を理解し、適切な回答を得られるように微調整が必要になる。

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

みんなが使っているのはChatGPT?それともGPT-4?

 2022年11月、すい星のように現れた生成AI「ChatGPT」によって、私たちとAIの関係はすっかり変わりました。コンサルティング会社のPwCが先日、「生成AIに関する実態調査2023 秋」と題されたレポートを発表しているのですが、この中でそれを示す面白い結果が出ています。

 日本国内の企業で働く人々を対象にアンケートした調査で、2023年5月にも同様の調査が行われています。そして、上のグラフにあるように、生成AIの認知度と活用推進度合いについて春と秋の結果を比較したところ、生成AIについて「全く知らない」と回答した人の割合が、44%から4%へと急激に低下したことが明らかになりました。

PwCホームページより転載
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※図表が表示されない場合は冒頭の【グラフ】のところを参照ください

【参考記事】
生成AIに関する実態調査2023 秋(PwC)

 他にも2023年度のユーキャン新語・流行語大賞では、「生成AI」がトップ10に選ばれています。こうした認知度向上に、ChatGPTが寄与していることは間違いないでしょう。

【参考記事】
ユーキャン新語・流行語大賞

 とはいえ、ChatGPTが登場してからたった1年。それに関する専門用語の中には、まだまだ理解が難しいものもあります。

 たとえば、ChatGPTや生成AIに関する記事の中で、「GPT-3.5」あるいは「GPT-4」といった単語が出てくるのを目にしたことがあるのではないでしょうか。

 よく「GPT-4を使うと回答結果が良くなる」などという表現がされるのですが、果たして私たちが使っているのはChatGPTなのでしょうか、それともGPT-3.5あるいはGPT-4なのでしょうか。

 簡単に言ってしまうと、ChatGPTとGPT-3.5/4の関係は、クルマとエンジンのようなものです。ChatGPTというクルマにGPT-4というエンジンが積まれていて、私たちはChatGPTを「操縦」して、さまざまな目的を果たしていると考えると分かりやすいと思います。

 私たちがクルマを使うとき、車体を進める力を生み出しているのはエンジンです。したがって、私たちは「エンジンに乗って移動している」わけですが、実際にはそんな言い方はしません。

 クルマはエンジンだけで動くのではなく、車体や座席、操縦するためのハンドルや電子制御機器、安全のためのシートベルトやエアバッグなど、さまざまなパーツによって成り立っています。

 それらが組み合わされて「クルマで移動する」という体験が生み出されているのであり、だからこそ「うちのエンジンは素晴らしくてさ」などという表現はしないわけですね。

 もちろん、エンジンそのものが注目される場合もあります。