(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年12月14日付)
戦略的な気分の急変と言えば、ウクライナに対する米国の外交政策エスタブリッシュメント(支配階級)に勝る好例はそうないだろう。
1年前には、彼らはロシアの分割とウラジーミル・プーチンを戦争犯罪で裁判にかけることについて議論していた。
ところが今、ウクライナへの支援をめぐって米議会が揺らぐなかで、ワシントンは西欧の崩壊に身構えている。
驕りとパニックは1枚のコインの表裏だ。経験に基づく冷静さが著しく欠けている。
ワシントンで高まるウクライナ支援反対論
それでも冷静な状況評価は、西側が支援を継続できない限り、地上戦の形勢がプーチンに有利な方向に傾くことを教えてくれる。
ウクライナにおけるジョー・バイデンの目標は今も2本立てだ。一つはウクライナが自国を防衛できるようにすること。もう一つは米国がロシアとの戦争に巻き込まれるのを防ぐことだ。
バイデンは最初から、核兵器使用についてのプーチンの脅しを過大評価してきた。
その結果、ウクライナはまだ片手を背中に縛られた状態で自国を守ることを余儀なくされている。
プーチンは今、もう片方の腕も使えなくなるようにするために、米国の「ウクライナ疲れ」を利用している。
そしてロシアの独裁者は、ますます大胆になる米国のシンパ軍団の助けを当てにできる。
この軍団には、かつては保守派と呼ばれたが、今では極右ポピュリスト(大衆迎合主義者)と描写した方がふさわしい資金潤沢な米ヘリテージ財団が含まれる。