(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年12月6日付)

英国の低迷は対岸の火事ではない

 英国は20世紀の始まりをローマとして迎え、21世紀の始まりをイタリアとして迎えた。

 後者のたとえについては、あまり深く受け止めるべきではない。

 今日の英国とイタリアの間に数多くの違いがあることは、どんなバカでも分かる。

 だが、無視できない類似点が一つある。どちらの国も、生活水準の主要な決定要因である生産性が伸び悩んでいるということだ。

 イタリアでは、20世紀の終わり頃から生産性が伸び悩んでいる。英国では、世界金融危機以来そうだ。

 英国にとって経済面の最大の課題は、この停滞に終止符を打つことだ。それができなければ、その他の社会的、政治的問題を解決することもできない。

 シンクタンクのレゾリューション財団の新刊「Ending Stagnation(停滞を終わらせる)」はこの現状に真正面から取り組む重要な報告書だ。

 だが、それが極めて重要だとしても生産性の停滞を終わらせることだけでなく、ほかの弱点にも目を向けている。

 実際、弱点を列記した「調書」は気が滅入るほど長い。

 そこに記された最も衝撃的な結論のなかには、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)に関するものもある。

 英国が高所得の民主主義国として繁栄を続けたいのであれば数々の難問に取り組まなければならないが、ブレグジットという横道に逸れたことが非常に大きな代償をもたらした、というのがそれだ。