(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年11月24日付)

サム・アルトマン氏の解任と復帰劇は単なる一企業の人事問題ではない(写真は11月16日APECのCEOサミットに出席したアルトマン氏、写真:AP/アフロ)

 ここ数日で、米OpenAIのコーポレートガバナンス(企業統治)体制の失敗が余すところなく露わになった。

 17日金曜日、世界で最もホットなスタートアップ企業の独立理事(営利企業の独立取締役に相当)4人が、理事会をミスリードしたとの理由で最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン氏を解任した。

 新しい暫定CEOが指名されたが、この人物もほとんど即座に解任された。

 だが、OpenAIの従業員や投資家から抗議の声が沸き起こると、理事会は21日火曜日にはアルトマン氏が実は信頼できる人物でCEOに復帰させるに足ると結論づけ、同氏をいったん解任した3人の理事の方が辞任することになった。

 これほどの短い期間にこれほどの数の急旋回を詰め込むことができるのは、スピードに乗ったフィギュアスケートの選手だけだろう。

OpenAIの壮大な「実験」

 今回の騒動を見ていると、人工知能(AI)の開発が安全に行われるようにする責任を負った非営利の理事会に営利部門を監督させるOpenAIの実験は中止すべきだと結論づけたくなるだろう。

 OpenAIに130億ドル(約1兆9500億円)投資してきた米マイクロソフトは、すでに統治構造の変更を求めている。

 また、急遽定員3人に再編されたOpenAIの理事会には米セールスフォースの元CEOや元財務長官が名を連ね、従来型の受託者責任を果たす任務により適した布陣になったように見える。

 しかし、世界で最も重要なAI企業の経営陣に、その技術がもたらす影響の責任を取らせる試みをやめてしまうとしたら、それは悲劇的な誤りだ。

 アルトマン氏を含むこれらの企業の経営者たちでさえ、AIは非常に有望だとはいえ、壊滅的なリスクを抱えている可能性もあることを認めている。